精神障害の労災、業種別の件数と認定率

精神障害で労災が認められた件数は、令和7年度に「医療、福祉」が292件で最も多かった。次いで製造業158件、卸売業・小売業116件。厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」による。ただし、決定された件数に占める認定の割合で見ると順番が変わる。建設業の44.3%に対して、教育・学習支援業は11.7%だった。

業種別の件数と認定率

令和7年度(2025年4月から2026年3月)に業務災害として決定された精神障害の事案を、業種の大分類12区分で並べた。認定率は、支給決定件数を決定件数で割った値である。

業種(大分類) 請求件数 決定件数 支給決定件数 認定率
医療、福祉 1,288 970 292 30.1%
製造業 720 549 158 28.8%
卸売業、小売業 645 507 116 22.9%
運輸業、郵便業 419 328 104 31.7%
その他の事業(上記以外) 474 373 102 27.3%
建設業 246 221 98 44.3%
宿泊業、飲食サービス業 247 187 64 34.2%
サービス業(他に分類されないもの) 383 270 57 21.1%
情報通信業 238 199 41 20.6%
金融業、保険業 104 85 23 27.1%
教育、学習支援業 160 120 14 11.7%
農業、林業・漁業・鉱業、採石業、砂利採取業 34 30 13 43.3%
合計 4,958 3,839 1,082 28.2%

全体の認定率は28.2%。決定された3,839件のうち、業務が原因だと認められたのは1,082件だった。残る7割ほどは認められていない。

件数の順位と認定率の順位は食い違う。医療、福祉は請求件数でも支給決定件数でも1位だが、認定率は30.1%で全体平均をわずかに上回る程度にとどまり、支給決定件数では6番目の建設業が44.3%で12区分のいちばん上に来る。教育、学習支援業は請求160件に対して支給決定14件。全体平均の半分に届かない。

認定率は分母が小さいと振れる。教育、学習支援業の決定件数は120件、農業ほかは30件しかないので、この2つの率は年度によって大きく動きうる。

中分類で見ると、上位2つが介護と医療

大分類だと自分の職場がどこに入るのか分かりにくい。中分類の上位15業種を、支給決定件数の多い順に出す。

順位 業種(中分類) 支給決定件数 うち女性
1 社会保険・社会福祉・介護事業 151 117
2 医療業 139 119
3 道路貨物運送業 68 15
4 総合工事業 51 16
5 飲食店 45 22
6 設備工事業 30 8
7 情報サービス業 29 7
8 各種商品小売業 25 12
8 その他の小売業 25 11
10 輸送用機械器具製造業 24 5
11 機械器具小売業 21 10
11 娯楽業 21 8
11 その他の事業サービス業 21 9
14 電気機械器具製造業 20 7
15 金属製品製造業 19 11
15 食料品製造業 19 7

上位2つで290件。全体1,082件の27%が介護と医療の現場から出ていて、この2業種は女性の割合も高く、社会保険・社会福祉・介護事業では151件のうち117件、医療業では139件のうち119件を女性が占めている。

3位以下は一気に落ちる。道路貨物運送業68件、総合工事業51件、飲食店45件。10位から15位は19件から24件の範囲に固まっていて、順位の差を読む意味はない。下半分は団子。

全体は請求が1,178件増え、支給決定は26件増えた

令和7年度の請求件数は4,958件で、令和6年度の3,780件から1,178件、3割を超えて増えた。一方で支給決定件数は1,056件から1,082件へ26件増えたにとどまっており、請求が増えた分だけ認定が増えたわけではない。増えたのは請求のほう。

自殺(未遂を含む)の支給決定は76件で、前年度の88件から減っている。

医療、福祉の構成比も見ておく。請求件数に占める割合は令和6年度26.0%、令和7年度26.0%で動いていない。支給決定件数に占める割合は25.6%から27.0%へ上がった。

件数の多さは、起きやすさの順位ではない

この表には分母がない。業種ごとに働いている人の数が違うのに件数だけが並んでいるので、働く人の多い業種ほど数字は積み上がることになり、順位の一部は業種そのものの大きさから来ている。就業者1万人あたりに直した数字は、この資料に載っていない。

請求されなかったものも入らない。労災の請求は本人か遺族が行うものなので、体調を崩して働けなくなっても請求に至らなければ、その人はこの統計のどこにも現れず、業種によって請求に至る割合が違えば件数の差はその違いも映すことになる。

認定率にも読み方の注意がある。分子の支給決定件数と分母の決定件数は同じ年度のものだが、そこに含まれる事案は前年度以前に請求されたものを含む。請求件数の列とは対象がずれている。

原因となった出来事の内訳や年齢別の件数は、同じ資料の別の表にある。業種と原因を掛け合わせた集計は公表されていないため、「この業種でパワハラが何件」という数字はここからは出せない。

休業に至ったメンタル不調の業種差は、業種別のメンタル休職にまとめてある。ハラスメントの相談件数については業種別のハラスメントのほうが近い。

自分の業種の数字を、手元に置いておく

自分の中分類がこの15業種に入っているかどうか。入っているなら件数と、大分類の認定率を控えておく。入っていなければ大分類の行だけでいい。2つの数字。

数字そのものが何かを解決するわけではない。ただ、体調の変化を記録するときに業務上の出来事と日付を並べて書いておくと、あとで産業医や労働基準監督署に事情を説明する場面で、記憶ではなく記録として出せる材料になる。いつから、何があって、どう変わったか。この3つを日付つきで残すところから。

出典

  1. 令和7年度「過労死等の労災補償状況」/厚生労働省/令和8年7月15日公表・令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に決定した業務災害の事案・精神障害の決定件数3,839件
  2. 同 別添資料 精神障害に関する事案の労災補償状況(表2-2 業種別請求・決定及び支給決定件数、表2-2-2 支給決定件数の多い中分類上位15業種)/厚生労働省