看護師の離職率は、2024年度で11.0%。日本看護協会が全国の病院を対象に毎年実施している病院看護実態調査の、2025年調査の数値である。正規雇用の看護職員の総退職者数を平均職員数で割ったもので、新卒採用者だけを見ると8.4%、既卒採用者は16.1%。採用の入口が違うと、1年目に辞める割合も2倍近く開く。
看護師の離職率11.0%、病床規模で差
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調査の概要
日本看護協会の病院看護実態調査は、1995年から毎年行われている施設調査だ。2025年調査は10月1日から11月17日にかけて、全国の病院8,022施設(全数)の看護部長に回答を依頼し、3,502施設から有効回答を得ている。有効回収率43.7%。
離職率の集計対象になったのは3,440施設で、2024年度はじめ(2024年4月1日)の正規雇用看護職員数は合計549,135人。2024年度の総退職者数は60,709人、うち定年退職者が3,449人だった。
ここでいう看護職員は保健師・助産師・看護師・准看護師を指し、看護補助者を含まない。フルタイムと短時間勤務の正規雇用職員が対象で、パート、アルバイト、臨時職員、嘱託は入らない。
2024年度の離職率
| 区分 | 離職率 | 回答病院数 |
|---|---|---|
| 正規雇用看護職員 | 11.0% | 3,440 |
| 新卒採用者 | 8.4% | 3,435 |
| 既卒採用者 | 16.1% | 3,431 |
前年度と比べると、正規雇用看護職員は0.3ポイント、新卒採用者は0.4ポイント下がり、既卒採用者は同じ水準だった。
算出方法は区分ごとに違う。正規雇用看護職員の離職率は、年度の総退職者数を平均職員数で割ったもので、平均職員数は年度当初と年度末の在籍数の平均。新卒採用者と既卒採用者の離職率は、その年度に採用された人のうち年度末までに退職した人の割合で、分母が採用者数になる。定年退職と転職は、どちらも離職に含まれている。
自分の病院の数字と比べるときは、ここを揃える。年度末までに辞めた新卒の人数を、その年の新卒採用数で割れば、8.4%と同じ土俵の値になる。
新卒については、出てきた学校の種別でも集計されている。看護師に限った新卒採用者(正規雇用、採用1名以上の病院2,106施設)の離職率は全体で8.2%、内訳は大学が7.5%、短期大学の3年課程が8.1%、看護師学校養成所の3年課程が8.7%、2年課程が12.3%だった。2年課程だけ4ポイント以上高い。
病床規模別では、99床以下がいちばん高い
| 病床規模 | 正規雇用看護職員 | 新卒採用者 | 既卒採用者 | 回答病院数 |
|---|---|---|---|---|
| 99床以下 | 13.1% | 13.8% | 19.0% | 866 |
| 100〜199床 | 12.6% | 11.3% | 18.0% | 1,223 |
| 200〜299床 | 11.3% | 8.8% | 14.4% | 475 |
| 300〜399床 | 11.1% | 8.3% | 14.4% | 374 |
| 400〜499床 | 10.1% | 8.2% | 14.5% | 208 |
| 500床以上 | 10.0% | 7.6% | 13.1% | 279 |
正規雇用看護職員では、99床以下の13.1%と500床以上の10.0%で3.1ポイントの差。新卒採用者はもっと開く。99床以下の13.8%に対して500床以上は7.6%で差は6.2ポイントになり、小規模な病院で新卒が1年目に辞める割合は大規模病院の1.8倍ほどになる。
既卒採用者はどの規模でも13%を超えていて、規模による差は正規雇用全体より小さい。転職して入った人が1年目に辞める割合は、病床数に関わらず高い水準で並ぶ。この区分だけ、規模の大小から読めることが少ない。
退職者数そのものの増減も尋ねている。2024年度の総退職者数が「変わらない」と答えた病院が36.2%で最も多く、「やや減少した」が25.1%、「やや増加した」が23.4%。「とても増加した」は6.9%、「とても減少した」は6.7%だった。
管理者が挙げた、新卒が辞めた理由
同じ調査は、年度末までに退職した新卒採用看護師が1名以上いた病院に、看護管理者が考える主な退職理由を5つまでの複数回答で聞いている(n=993)。
| 理由 | 割合 |
|---|---|
| 健康上の理由(精神的疾患) | 54.6% |
| 自分の看護職員としての適性への不安 | 46.6% |
| 自分の看護実践能力への不安 | 44.2% |
| 上司・同僚との人間関係 | 27.0% |
| 他施設への関心・転職 | 23.0% |
| 健康上の理由(身体的疾患) | 15.4% |
| 他分野(看護以外)への関心・転職 | 14.9% |
| 転居 | 8.4% |
| 結婚 | 7.9% |
| 家族の健康問題・介護 | 7.6% |
| 医療事故への不安 | 6.0% |
| 出産・育児 | 4.6% |
| 夜勤の負担が大きい | 3.8% |
| 給与への不満 | 2.6% |
| 教育体制への不満 | 2.5% |
| 超過勤務が多い | 1.8% |
| 休暇がとれない・とりづらい | 1.2% |
上位3つは、精神的な健康と、自分の適性や実践能力への不安。労働条件に関する項目は、下のほうに並ぶ。夜勤の負担が3.8%、給与への不満が2.6%、超過勤務が1.8%で、いずれも管理者が主な理由として挙げた割合としては1桁にとどまった。
休職の側にも数字がある。2024年度に病気を理由として1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は72.6%で、そのうちメンタルヘルス不調者がいたと答えた病院は79.5%、人数の平均は5.4人だった。
この数字が答えていないこと
4つある。
第一に、回答しているのは看護部長であって、辞めた本人ではない。退職理由の表は管理者から見た理由で、本人の言葉と一致するとは限らない。精神的疾患が54.6%と最も高いのも、管理者が把握しやすい理由から順に挙がる構造を含んでいる可能性がある(推定)。
第二に、対象が病院に限られている。診療所、訪問看護ステーション、介護施設、企業の看護職は入らないので、病院から診療所へ移って看護師を続けている人も、この調査の上では離職した1人として数えられている。看護の現場から離れた人だけの数字ではない。
第三に、離職に定年退職と転職の両方が入っている。2024年度の総退職者数60,709人のうち定年退職者は3,449人で、全体の5.7%ほど。残りの大半が自己都合や転職だが、内訳は公表されていない。
第四に、病床規模の区分ごとの回答病院数に偏りがある。100〜199床が1,223施設で最も多く、400〜499床は208施設。区分が小さいほど、数値は数施設の動きで振れる。
全産業や他業種の離職率との比較は、この調査からはできない。厚生労働省の雇用動向調査を使った水準は離職率の平均と業種別の離職率にまとめてある。調査が違うので、数値をそのまま並べると算出方法がずれる。
自分の職場に当てはめる
11.0%という全国の値は、自分の病棟で何人辞めるかを予想する数字ではない。使い方は、自分の病院の数字を同じ式で出して、どちらに寄っているかを見ること。年度の総退職者数と、年度当初と年度末の在籍数が分かれば計算できる。
そのうえで、辞めた人の理由と自分が消耗している理由が同じかどうかは、別の作業になる。この調査の上位に並ぶのは、適性や実践能力への不安と、人間関係。どちらも、夜勤の回数や残業時間のように数えられる条件ではない。
このサイトの診断は、職場の環境を12の軸に割って記録する。人と接する量、確認の頻度、学ぶことの量、手順の明確さ。自分が集中できた場面の値といまの職場の値を並べると、どの軸がどれだけ離れているかが出てくるので、辞めるかどうかの前に、何がずれているのかを言葉にできる。全国値より、こちらのほうが扱える。





