離職率、業種別で6.6%から23.7%

業種で離職率は6.6%から23.7%まで開く。いちばん高いのが宿泊業,飲食サービス業の23.7%、いちばん低いのが金融業,保険業の6.6%で、差は17.1ポイント、倍率にすると3.6倍になる。厚生労働省の令和7年雇用動向調査が、常用労働者5人以上の事業所から無作為に抽出した約1万5,000事業所を対象に集計した2025年1年間の数値である。産業計は13.7%。ただし離職率だけを縦に並べると見落とすものがあって、同じ業種でも一般労働者とパートタイム労働者では数値が倍以上動く。

16業種の入職率と離職率

産業 入職率 離職率 入職超過率
宿泊業,飲食サービス業 27.8% 23.7% 4.1
サービス業(他に分類されないもの) 21.8% 21.2% 0.6
生活関連サービス業,娯楽業 21.3% 20.1% 1.2
教育,学習支援業 15.5% 15.1% 0.4
医療,福祉 14.5% 14.3% 0.2
不動産業,物品賃貸業 14.4% 12.1% 2.3
卸売業,小売業 12.6% 11.9% 0.7
学術研究,専門・技術サービス業 12.9% 11.7% 1.2
情報通信業 13.6% 10.4% 3.2
鉱業,採石業,砂利採取業 10.5% 10.2% 0.3
製造業 9.6% 9.8% -0.2
運輸業,郵便業 9.6% 9.0% 0.6
電気・ガス・熱供給・水道業 9.3% 8.8% 0.5
建設業 10.4% 8.7% 1.7
複合サービス事業 6.3% 8.6% -2.3
金融業,保険業 8.7% 6.6% 2.1
産業計 14.7% 13.7% 1.0

産業計の13.7%を上回るのは5業種だけで、宿泊業,飲食サービス業と、サービス業(他に分類されないもの)と、生活関連サービス業,娯楽業と、教育,学習支援業と、医療,福祉がそれに当たり、残る11業種はいずれも産業計を下回っている。上下に割れてはいない。6%台から12%台のあいだに11業種が密集し、そこから離れた20%以上のところに3業種が浮かんでいる。真ん中が薄い分布。

順位を覚えるより、産業計の13.7%からどれだけ離れているかを見たほうが使える。自分の業種が14.3%なら全体とほぼ同じ位置にいるわけで、周囲で人が辞めていく頻度を業種の性質で説明するのは難しく、勤め先の事情のほうを先に疑うことになる。20%を超える業種なら全体平均のおよそ1.5倍。全体の平均そのものは離職率の平均13.7%、男女で2.6ポイント差に、10年ぶんの動きは離職率の推移にまとめてある。

離職率が高い業種で人が減っているとは限らない

宿泊業,飲食サービス業の離職率は23.7%。同じ年の入職率が27.8%あるので差し引き4.1ポイントの入職超過となり、年初の在籍者のおよそ4人に1人が1年で辞めた業種でありながら、常用労働者の数そのものは前年より増えている。16業種で入職超過率は最大。

逆の例。離職率8.6%と下から3番目の複合サービス事業は、入職率が6.3%しかない。マイナス2.3ポイントの離職超過で、人は減っている。製造業も入職9.6%に対して離職9.8%で、わずかに離職が上回った。

計で離職超過になったのはこの2業種だけ。ただし一般労働者に限ると顔ぶれが変わり、医療,福祉が入職13.1%・離職13.6%、生活関連サービス業,娯楽業が入職15.0%・離職16.1%、教育,学習支援業が入職9.4%・離職9.8%で、いずれも離職が上回る。パートタイム労働者の入職が多い業種では、計の数値が入職超過に振れる。人の入れ替わりが速い職場と、人が減り続けている職場は、別々に数える。

教育,学習支援業は就業形態で17.2ポイント離れる

同じ業種の中で、一般労働者とパートタイム労働者の離職率がどれだけ違うか。産業計で11.4%と19.9%、差は8.5ポイントある。

産業 一般労働者 パートタイム労働者
教育,学習支援業 9.8% 26.6%
学術研究,専門・技術サービス業 10.0% 26.7%
情報通信業 10.0% 21.9%
電気・ガス・熱供給・水道業 8.0% 19.6%
建設業 7.9% 19.3%
宿泊業,飲食サービス業 21.5% 25.0%
医療,福祉 13.6% 15.9%
産業計 11.4% 19.9%

開きがいちばん大きいのは教育,学習支援業の17.2ポイント。一般労働者だけで見れば9.8%で16業種のうち下から8番目に入る数値なのに、パートタイム労働者を合わせた計になると15.1%まで上がり、順位でいえば上から4番目まで動いてしまう。非常勤で働く人の比率が高い業種では、計の数値が自分の立場の数値からずれる。

学術研究,専門・技術サービス業も16.7ポイント離れている。逆に、医療,福祉の差は2.3ポイントしかない。就業形態の列まで降りて読む。

離職率という言葉が指している範囲

雇用動向調査の離職率は、1月1日現在の常用労働者数に対する、その年の離職者数の割合である。分母は年初の在籍者、分子は1年間に辞めた人。パートタイム労働者を含む常用労働者が対象で、日雇いや期間1か月未満の雇用は入らない。

分子の「離職」に理由の区別はない。転職も、定年退職も、契約期間の満了も、解雇も、すべて同じ1件として数える。だから離職率23.7%の業種で23.7%の人が不満を持って辞めたとは読めない。理由の内訳は同じ調査の別の表にあり、そちらは離職理由別の集計として切り分けてある。

新しく入った人が3年でどれだけ辞めたかを見る数値は、これとは別の調査。学校を出たばかりの人を追いかけた集計は早期離職の業種別、高卒64.7%に、残った側から見た数値は定着率、業種別で17.1ポイント差にある。

この数字が答えていないこと

業種のなかのばらつきは出てこない。離職率6.6%と書かれた業種に、年に3割が入れ替わる事業所が無いという意味にはならない。集計は事業所を抽出した平均で、自分の勤め先がその平均のどちら側にいるかは、この表からは分からない。

調査の対象は、常用労働者を5人以上雇う事業所から層化して無作為に抽出した約1万5,000事業所。5人未満の事業所は最初から入っていない。小規模な事業所が多い業種では、公表されている数値が業種全体の実態と離れる余地がある。

自分がどの業種の行に入るかは、職種ではなく勤め先の主な事業で決まる。病院で経理をしているなら医療,福祉、メーカーで同じ仕事をしているなら製造業。派遣で働いている場合は派遣元の事業で分類されるため、毎日通っている派遣先の業種と一致しないことがある。

自分の職場の離職率を、業種の行の隣に置く

計算は2つの数字でできる。年明け時点の部署の在籍者数と、その1年で辞めた人数。後者を前者で割って100を掛ければ、雇用動向調査と同じ形の離職率になる。部署単位だと母数が20人30人で、1人辞けば3〜5ポイント動くので、数値そのものより上の表のどのあたりに落ちるかを見る。

産業計の13.7%と、自分の業種の数値と、自分の職場の数値。3つ並べたときに、職場の数値が業種より高ければ、辞める理由は業種の性質だけでは説明がつかない。1年後に同じ計算をすると、動いたかどうかも分かる。書き留めるのは3行。

出典

  1. 令和7年雇用動向調査結果の概況(2 産業別の入職と離職/表4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率)/厚生労働省/2025年1年間・常用労働者5人以上の事業所から層化無作為抽出した約15,000事業所
  2. 令和7年 雇用動向調査結果の概要(調査の概要と統計表)/厚生労働省