36協定で書くのは2つの書面。労使で合意した協定そのもの(協定書)と、労働基準監督署に届け出る協定届。届出に使う様式第9号には、事業場の名称と所在地、協定の有効期間、時間外労働が必要な具体的事由、業務の種類、労働者数、「1日」「1か月」「1年」の延長時間、1年の起算日、協定当事者の氏名と選出方法を書く欄がある。
36協定は、法定労働時間を超えて働かせるために労使で結んで届け出る書面のこと。制度の全体は36協定とは、残業の上限を決める書面に分けて書いた。この記事は様式の欄ごとに何が入るのかを見ていく。会社が書く順と、働く側が読む順は逆になるので、読む順は最後の節にまとめた。
協定届と協定を兼ねることもできる
厚生労働省の記載例によると、流れは4つの段で進む。労働者代表と使用者で合意のうえ36協定を締結し、その内容を協定届(様式第9号等)に記入し、労働基準監督署に届け出て、常時各作業場の見やすい場所への掲示や書面の交付等の方法で労働者に周知する。
協定届は、締結した内容を転記する紙。ただし協定届を用いて36協定を締結することもできて、その場合は記名押印または署名など、労使双方の合意があることが明らかとなるような方法が必要になる。必要事項の記載があれば、協定届の様式以外の形式でも届出はできる。
掲示されているのが協定届1枚だけなら、兼用になっている可能性が高い。署名か記名押印が入っているかどうかで見分けられる。
様式第9号の欄に入るもの
記載例の注記は、欄ごとに書き方まで指定している。
- 事業の種類・名称・所在地は、工場、支店、営業所等の事業場ごとに協定する
- 労働保険番号と法人番号を記載する
- 協定の有効期間は「1年間とすることが望ましい」
- 時間外労働をさせる必要のある具体的事由は「事由は具体的に定めてください」
- 業務の種類は「業務の範囲を細分化し、明確に定めてください」
- 1日・1か月・1年の延長時間は、法定労働時間を超える時間数で書く
- 1年の起算日は、協定の有効期間にかかわらず同一の日である必要がある
- 休日労働は、労働させることができる法定休日の日数と、始業・終業の時刻を書く
延長時間の欄には上限が付いている。1か月は45時間以内、1年は360時間以内。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制が適用される労働者は欄が分かれていて、こちらは1か月42時間以内・1年320時間以内になる。自分の勤務が変形労働時間制かどうかで、協定に書ける時間数が1か月で3時間、1年で40時間ぶん変わる。
所定労働時間の欄は(任意)と書かれていて、記載しなくても構わない。空欄があっても不備ではない欄が混じっている。
チェックボックスが空なら、その協定届は通らない
2021年4月から、様式が新しくなった。使用者の押印および署名が不要になり(記名は必要)、協定当事者に関するチェックボックスが新設された。
チェックは2か所ある。1つは、時間外労働と法定休日労働を合計した時間数が月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内であることを労使で確認したという欄。記載例は「チェックボックスにチェックがない場合には、有効な協定届とはなりません」と書いている。
もう1つは協定当事者についての欄で、こちらも「チェックがない場合には、形式上の要件に適合している協定届とはなりません」。過半数組合が無い場合は、36協定の締結をする者を選ぶことを明確にした上で投票・挙手等の方法で過半数代表者を選出し、その選出方法を書く。使用者による指名や、使用者の意向に基づく選出は認められない。管理監督者は労働者代表になれない。
選出方法の欄に何と書いてあるか。「投票による選挙」なのか、空欄なのか、職場で見かけない名前が入っているのか。ここは働く側が自分で確かめられる数少ない欄。
特別条項があると、2枚目が増える
月45時間を超える協定を結ぶときは様式第9号の2を使う。限度時間内の時間外労働についての届出書(1枚目)と、限度時間を超える時間外労働についての届出書(2枚目)の2枚を書く。
2枚目の欄には、1枚目に無いものが並ぶ。
- 限度時間を超えて労働させることができる回数。年6回以内
- 限度時間を超える1か月の時間外労働と休日労働の合計時間数。月100時間未満
- 限度時間を超える1年の時間外労働の時間数。年720時間以内
- 限度時間を超えた労働に係る割増賃金率。法定の割増率25%を超える率となるよう努める
- 限度時間を超えた労働者に対して講じる健康確保措置。裏面の記載心得にある10項目から番号を選び、具体的内容を書く
- 限度時間を超えて労働させる場合にとる手続
事由の書き方はここだけ厳しい。一時的または突発的に時間外労働を行わせる必要のあるものに限られ、できる限り具体的に定めなければならない。「業務の都合上必要なとき」「業務上やむを得ないとき」のような、恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められない。
記載例では、割増賃金率に35%、健康確保措置に「対象労働者への医師による面接指導の実施」「対象労働者に11時間の勤務間インターバルを設定」「職場での時短対策会議の開催」、手続に「労働者代表者に対する事前申し入れ」が入っている。例示であって、職場ごとに中身は違う。
様式は業務で分かれている
使う紙は11種類ある。一般条項が様式第9号、特別条項が第9号の2。新技術・新商品等の研究開発業務は第9号の3。建設事業を含む場合は第9号の3の2と3の3、自動車運転の業務を含む場合は第9号の3の4と3の5、医業に従事する医師を含む場合は第9号の4と5。残る第9号の6と9号の7は、労使委員会と労働時間等設定改善委員会の決議届。
自分の職場の協定届が第9号なのか第9号の2なのかで、読む枚数が1枚か2枚かに分かれる。
読む順は、書く順の逆から
掲示されている協定届から条件を取り出すなら、順番を決めておくほうが早い。
- 様式の番号を見る。第9号なら特別条項なし、第9号の2なら2枚目がある
- 1か月の延長時間を見る。45時間か42時間が上限の欄
- 1年の延長時間と起算日を見る。起算日から12か月で何時間使えるかが決まる
- 2枚目があれば、回数(年6回以内)と割増賃金率を見る
- 有効期間を見る。切れていれば、その協定は効力を持たない
この5つを書き写すと、職場で想定されている残業の量が数字になる。協定の時間数と、実際に働いた時間は別の数字で、全国の平均は毎月勤労統計調査で月9.8時間。数え方そのものは残業時間の計算はどこから始まるかにある。
協定届は労働基準法第106条で周知が義務づけられているので、掲示場所が分からないときは写しを求められる。断る理由は原則として無い。
写した数字を条件として置く
協定届の欄は、自分の努力や交渉とは別の層で先に決まっている。1か月45時間の協定と1か月30時間の協定では、同じ働き方をしても到達できる上限が違う。
書き写すのは、1か月の延長時間、1年の延長時間、特別条項の回数、割増賃金率の4つ。これと自分の月の時間外労働を並べて4週ぶん記録すると、その職場で何が普通とされているかが、繁忙期の記憶とは別の形で残る。