デザイナーの残業、統計では月8時間

職種「デザイナー」の残業は、月8時間だった。令和7年賃金構造基本統計調査の職種小分類の値で、2025年6月の1か月ぶん、企業規模10人以上の一般労働者91万4,500人を集計した超過実労働時間数。所定内実労働時間は164時間で、合わせると172時間になる。

同じ表を企業規模で割ると、いちばん残業が長いのは100〜999人の10時間、短いのは10〜99人の6時間だった。

企業規模別に並べると、中規模がいちばん長い

企業規模 超過実労働時間 所定内実労働時間 きまって支給する現金給与額 労働者数
計(10人以上) 8時間 164時間 375.6千円 91,450人
1,000人以上 9時間 166時間 473.0千円 11,130人
100〜999人 10時間 166時間 381.2千円 41,150人
10〜99人 6時間 161時間 342.1千円 39,170人

大企業ほど残業が長いという形にはなっていない。4時間の差。所定内労働時間も161時間から166時間まで5時間ぶん違っていて、超過と所定内を足した実労働時間の合計で見ると10〜99人が167時間、100〜999人が176時間となり、企業規模のあいだの開きは残業だけを見たときの2倍以上、9時間まで広がる。

給与のほうは規模の順に並ぶ。1,000人以上が473.0千円、10〜99人が342.1千円。残業時間は9時間と6時間で3時間しか違わないのに、月々の給与は130.9千円違う。残業の長さと給与の高さが同じ方向に動くわけではないことが、この表の中だけで見える。

この「デザイナー」に誰が入っているか

賃金構造基本統計調査の職種小分類は、日本標準職業分類にもとづく区分。「デザイナー」の1区分に、Web、グラフィック、インテリア、工業製品などが区別されずに入る。Webデザイナーだけを取り出した数字は、この調査からは出ない。

職種を選ぶのは事業所の側。デザイン業務と制作進行を兼ねている人がどちらに数えられているかも事業所の判断で分かれるので、91万4,500人という労働者数は、名刺に「デザイナー」と刷ってある人の数とも、求人サイトでデザイナー職として募集されている枠の数とも一致しない。

対象は企業規模10人以上の事業所に勤める一般労働者。フリーランス、業務委託、短時間労働者は入っていない。制作会社に常駐している派遣社員は派遣元の事業所で数えられる。

近い職種と並べる

職種 超過実労働時間 所定内実労働時間 平均年齢 労働者数
画工、塗装・看板制作従事者 14時間 165時間 41.6歳 55,570人
美術家、写真家、映像撮影者 13時間 159時間 39.8歳 16,950人
製図その他生産関連・生産類似作業従事者 12時間 165時間 41.5歳 99,740人
著述家、記者、編集者 11時間 157時間 41.5歳 43,770人
デザイナー 8時間 164時間 39.1歳 91,450人

制作系の5職種のうち、デザイナーの超過実労働時間はいちばん短い。いっぽうで所定内実労働時間は164時間と長めに出ているため、超過と所定内を足した172時間という合計は、超過が13時間ある美術家・写真家・映像撮影者の172時間とぴったり並ぶ。順番が入れ替わる。

全職種の平均と比べたい場合は、別の調査になる。毎月勤労統計調査の値は残業時間の平均は月9.8時間に分けて書いた。技術者と名の付く職種の分布はエンジニアの残業時間、平均は8〜20時間にある。

残業は男女で同じ、年齢と勤続年数が違う

区分 超過実労働時間 所定内実労働時間 平均年齢 勤続年数 労働者数
男女計 8時間 164時間 39.1歳 9.8年 91,450人
男 8時間 164時間 41.3歳 11.1年 38,430人
女 8時間 164時間 37.6歳 8.8年 53,030人

超過実労働時間は男女どちらも8時間で、所定内も164時間で並んだ。差は出ていない。

違うのは人の構成。女性が5万3,030人で、男性の3万8,430人より多い。平均年齢は女性が3.7歳低く、勤続年数も2.3年短い。きまって支給する現金給与額は男性473.0千円に対して女性386.2千円で、86.8千円の差。年齢と勤続年数の差がどれだけ効いているかは、この表だけでは分けられない。

8時間という数字が拾っていないもの

この超過実労働時間数は、6月の1か月について事業所が答えた値。6月を毎年の調査月に決めているのは調査の設計上の都合で、年度末の納品が重なる月や大きな案件の山に当たる月を代表させるために選ばれた月ではないから、そういう月だけを取れば数字は長くなる。

裁量労働制やみなし労働時間制で働く人の場合、実際に机に向かっていた時間と、事業所が記録している所定外労働時間はずれることがある。持ち帰りの作業、勉強にあてた時間も入らない。仮説として、上位の記事が挙げる19〜20時間という数字との差は、この記録のされ方と、調査対象の違い(Web制作会社に絞った調査かどうか)から来ている部分が大きい。

制度としての残業代の扱いは固定残業代とは何を指すのかに書いた。自分の残業が記録の上でどう扱われているかは、給与明細と就業規則を照らすと分かる。

自分の8時間を、この8時間と比べる前に

職種の平均と自分の残業時間を比べるとき、比べ方が2通りある。同じ職種の中での位置を見るか、自分が働き続けられる時間との距離を見るか。後者は統計には出てこない。

月8時間で足りないと感じる人もいるし、月8時間でも重いと感じる人もいる。必要な残業の量ではなく、許容できる量が人によって違うということ。workprevu の診断では、いまの職場の労働時間と裁量の度合いを設問で記録して、自分が続けられる条件との距離を見る。

出典

  1. 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額等/厚生労働省/2025年6月分・一般労働者・企業規模10人以上
  2. 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(統計表の一覧)/厚生労働省・政府統計の総合窓口
  3. 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(調査の概要・用語の解説)/厚生労働省