休職できるかどうかを決めているのは、労働基準法ではなく勤め先の規程だ。厚生労働省のモデル就業規則は、休職の条文例に付けた解説で「休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません」と書いている。労働政策研究・研修機構が2022年12月に実施した企業調査では、連続1ヵ月以上の病気休職制度が「ある」と答えた企業は69.5%。残りの約3割では、申し出る先の制度そのものがない。
休職の条件は勤め先の規程で決まる
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条件が書いてある場所は決まっている
休職は、業務外の病気や個人的な事情で長く働けないときに、従業員としての身分を残したまま就業義務を免除する扱いを指す。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、第9条に条文例を置いている。
業務外の傷病による欠勤が□か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき □年以内
□は空欄。欠勤が何か月続いたら休職に入るのか、その数字を各社が埋める形になっている。診断書を出した時点で休職が成立するとは限らず、まず欠勤が規程の月数に達することが入口に置かれている職場が多い。第1項第2号には「特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき」も並び、解説は公職への就任や刑事事件で起訴された場合を例に挙げる。言葉の範囲そのものは休職とは何を指すかで整理した。
条文の主語も読んでおきたい。モデル就業規則の条文例は「所定の期間休職とする」という書き方で、会社が休職を命じる形を取っている。本人の申し出が出発点になる職場もあるが、規程の上では会社の判断が挟まる。
制度そのものが無い職場が3割ある
労働政策研究・研修機構の「治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)」は、従業員10人以上の企業20,000社に郵送し、4,721社から有効回答を得た(有効回答率23.6%、2022年12月実施、2024年3月公表)。年次有給休暇以外に連続1ヵ月以上使える休職・休業の制度が「ある」と答えたのは69.5%で、2017年の同じ調査では65.6%だった。
| 正社員規模 | 病気休職制度が「ある」 |
|---|---|
| 10〜29人 | 65.1% |
| 30〜49人 | 73.4% |
| 50〜99人 | 79.4% |
| 100〜299人 | 84.0% |
| 300〜999人 | 89.8% |
| 1000人以上 | 95.1% |
規模が小さくなるほど「ある」の割合が下がる。業種別では金融業・保険業が87.8%、複合サービス事業が85.7%で高い側、建設業が63.8%、運輸業・郵便業が63.1%で低い側に並んだ。
この設問は慣行を含めて尋ねている。就業規則に条文がなくても、実際に休職させている会社は「ある」に入る。条文が見つからないことと、制度がないことは、同じではない。
非正社員かどうかで適用が変わる
制度がある企業のうち、非正社員がいる企業を対象に適用状況を尋ねた結果は、「正社員/非正社員の差はない」が55.4%、「一部の非正社員に適用がある」が10.9%、「非正社員には適用がない」が33.7%。3社に1社では、同じ職場にいても非正社員は休職条項の外に置かれている。
業種別に「非正社員には適用がない」の割合を見ると、教育・学習支援業が48.3%、複合サービス事業が46.9%、卸売業・小売業が43.0%。低いのは不動産業・物品賃貸業の20.4%、医療・福祉の21.5%。
適用を一部に限る場合、何を基準にしているのか。同じ機構の2012年の調査(常用労働者50人以上の民間企業、有効回答5,904社)では、「就業形態(契約社員、パートタイマー等)」が59.9%で最も多く、「労働時間」が9.8%、「勤続年数」が9.0%と続いた。「ケース・バイ・ケースであり基準はない」も17.7%。勤続年数を基準にした企業に具体的な年数を尋ねると、平均は2.6年だった。
規程で確かめる4か所
休職の条件は、ひとつの文では書かれていない。休職条項と、退職の条項、賃金の条項に分かれて散っている。読む順番を決めておくと速い。
- 対象者。本採用された人だけか、試用期間中を含むか、非正社員が入るか、勤続年数の下限があるか
- 発動の要件。欠勤が何か月続いたときか、誰が命じるのか、診断書の提出先はどこか
- 期間の上限と延長。何年までか、延長の規定があるか、再発したときに通算するか
- 満了したときの扱い。復職できない場合に退職となるか、解雇となるか
モデル就業規則の第9条第3項は、業務外の傷病で休職し、期間が満了してもなお治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする条文例を置いている。入口の条件を確かめた人が、次に見ることになるのは出口の日付だ。上限の分布は休職期間の上限にまとめた。
就業規則は、労働基準法第106条で労働者に周知することが事業主に義務づけられている。見たいと言えば見られる前提で置かれているもの。社内の共有サーバーや掲示で探して見つからなければ、所在を尋ねるところから始まる。
傷病手当金の条件は、休職条項の外にある
休職が認められることと、収入が続くことは別の手続きで決まる。健康保険の傷病手当金について、全国健康保険協会は次の4つの要件をすべて満たす場合に給付の対象になるとしている。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
支給額は、標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月が上限になる。
ここが休職条項と食い違うことがある。規程上の休職に入っていなくても、欠勤で4日以上働けず給与が出ていなければ、傷病手当金の要件は満たしうる。逆に、休職中に賃金の一部が支払われている場合は、4番目の要件に引っかかる。賃金の扱いは会社ごとに違い、同じ調査では休職期間中に月例賃金を支給する企業が71.6%あった。支給の有無と金額は休職中の給料で整理している。
条件を調べる作業は、たいてい体調が落ちてから始まる
就業規則を開くのは、欠勤が続いてからになりやすい。そのときには、いつから何が変わったのかを思い出しにくくなっている。
このサイトの診断は、職場の環境を12の軸に割って記録する。残るのは、どの軸がいつ動いたかという事実だけ。休職の条件そのものを変える力はないが、上司や産業医と話すときの材料にはなる。
出典
- 治療と仕事の両立に関する実態調査(企業調査)図表3-1 病気休職制度の有無・図表3-2 病気休職制度の非正社員への適用/独立行政法人 労働政策研究・研修機構/2022年12月実施・従業員10人以上の企業20,000社に郵送し有効回答4,721社(有効回答率23.6%)/2024年3月公表
- メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査(調査シリーズNo.112)図表4-21 病気休職制度を非正社員の一部に適用する場合の基準/独立行政法人 労働政策研究・研修機構/2012年11月実施・常用労働者50人以上の民間企業20,000社に郵送し有効回答5,904社(有効回収率29.5%)
- モデル就業規則(令和7年12月版。第9条 休職の条文例と解説)/厚生労働省労働基準局監督課/2025年12月
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)/全国健康保険協会





