テレワークをしない理由、1位が2つ

テレワークをしていない理由は、本人に聞いた形で分布が出ている。国土交通省の令和5年度テレワーク人口実態調査が、直近1年間テレワークをしていない雇用型就業者30,396人に尋ねたもの。経験のある人では「会社からテレワークを実施することを認められていない、または、出勤するよう指示等があり、テレワークを実施できないため」が38.3%で最も多く、経験の無い人では「接客等で直接対面や現地作業を必要とする仕事内容であり、テレワークを実施できないため」が50.0%で最も多い。

理由という言葉で指しているものが、この2つで違う。前者は会社が決めたこと、後者は仕事の中身。

調査は理由を4つの群で聞いている

選択肢は15項目あって、「会社の制度・環境」「仕事内容」「コミュニケーション」「個人事情等」の4群に束ねられている。複数回答で、上位3つまでを選ぶ形式。

この分け方が、そのまま動かせるかどうかの線になる。会社の制度は交渉の対象。仕事内容は業務の割り振りの話。個人事情は本人の側にある。同じ「できない」の中に、相手の違う3種類が混ざっている。

1位が入れ替わるのは、母集団が違うから

対象は2つに分かれている。テレワークの経験はあるが直近1年間は実施していない人が3,157人、経験の無い人が27,239人。

経験者の側は、会社の指示が38.3%で最多。次が接客等の仕事内容で26.4%、紙での処理・押印、電話対応、郵便物の受け取り・発送等で職場での作業が必要というものが16.2%、テレワークだとコミュニケーションがとりづらく業務効率が低下するためが14.2%。

未経験者の側は順番が変わる。接客等の仕事内容が50.0%で、会社の指示が39.5%。3位の紙の処理は12.1%まで下がる。

経験者のほうが会社の指示を理由に挙げやすい。やれる状態を知っている人が、やれないと答えているわけだ。

会社の指示は、どちらでも4割前後

2つの群に共通して高いのが、会社からの指示のほうだった。38.3%と39.5%。仕事内容が原因で散らばるのに対し、制度の側の壁は母集団を問わず同じ高さで立っている。

ここは語の切り方に注意が要る。選択肢は「認められていない」と「出勤するよう指示等があり」をひとまとめにしている。制度が無い職場と、制度はあるが出社を指示された職場が、同じ票に入っている。どちらなのかは自分で分けるしかない。制度の有無を確かめる場所はテレワークとは、場所の3区分の労使で決めておく項目の並びにある。

企業の側に聞いた「導入していない理由」は別の調査で、テレワーク導入率は企業規模で2倍差に整理した。会社に聞くと仕事の側の理由が上に来る。本人に聞くと会社の指示が上に来る。同じ職場を両側から見た結果だと思えば、食い違いそのものが情報になる。

仕事の中身が理由のときは、2種類ある

接客や現地作業は場所に縛られる。これは業務の性質で、割り振りを変えない限り動かない。

紙での処理・押印、電話対応、郵便物の受け取り。こちらを理由に挙げたのは経験者で16.2%、未経験者で12.1%。押印と郵便物の受け取りは、仕事の中身というより職場の手続きの形だ。電子化や当番制で動いた例があるぶん、交渉の余地が残る。

職種による差そのものはテレワーク職種別、62.2%から0%までにまとめた。自分の職種の実施率が高いのに自分は出社だけなら、理由は職種ではなく別の場所にある。

自宅の環境を理由に挙げる人は少ない

対策の話は机や回線に向きやすい。ところが、挙げた人の割合は低い。

自宅だと家族に気兼ねしたり集中できないため4.1%、快適な部屋・スペースや机・椅子がないため3.9%、自宅のインターネット環境やセキュリティが不十分または電話代・空調等の自己負担が発生するため3.9%。未経験者の側ではそれぞれ1.6%、1.8%、2.0%とさらに低い。

3つ足しても経験者で1割強。自宅の環境は、テレワークをしない理由の主役ではない。

感染症対策の必要性が無いから、は8.8%

時点の影響を受ける選択肢も入っている。新型コロナウイルス感染症対策としての必要性がないためを挙げたのは、経験者8.8%、未経験者8.5%。

関連して、会社が出社に戻す理由にも答えが出ている。厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトのQ&Aは、感染症法上の位置付けが変更されたことを理由として使用者から一方的にテレワークを廃止し出社を求めてよいかという問いに、雇用契約や就業規則で労働者が任意にテレワークを実施できると定められ労働条件となっている場合は、原則として使用者が一方的にテレワークを廃止し出社させることはできないと答えている。

就業規則に書かれているかどうかで、会社の挙げる理由の強さが変わる。書かれていれば労働条件。書かれていなければ、運用上の扱い。

この数字で言えないこと

3点ある。複数回答で上位3つまでを選ぶ形式なので、4つめ以降の理由は票に出ていない。令和5年度の調査で、令和6年度と令和7年度の調査ではこの設問が聞かれていないため、直近の構成は分からない。そして理由は本人の申告なので、会社が実際に何を根拠に出社を指示したかとは別物。

分布は相場として読む。自分の理由がどこに当たるかを決める材料であって、順位がそのまま自分の職場の順位になるわけではない。

理由を1つに決めてから持ちかける

4週間、記録をつける。出社した日に職場でしかできなかった作業を1行ずつ書く。押印が1件、来客が2件、電話の取り次ぎが5件といった形で。

書き出すと、理由が会社の指示なのか業務の性質なのかが自分で見える。会社の指示なら相手は規程。業務の性質なら相手は割り振り。どちらでもないなら、理由として挙がっていたものは思い込みだったことになる。

出典

  1. 令和5年度 テレワーク人口実態調査 調査結果(国土交通省、2024年3月公表、テレワークを実施していない理由はp.17。雇用型テレワーカー n=3,157/雇用型非テレワーカー n=27,239、計 n=30,396)
  2. テレワーク総合ポータルサイト Q&A「感染症法上の位置付けの変更を理由とするテレワークの廃止」(厚生労働省)