ワークエンゲージメントとは何の状態か

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指し、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される。オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli教授らが提唱した概念で、厚生労働省も令和元年版の労働経済の分析でこの定義を採っている。

3つ揃って初めて、という点が使いどころ。熱意はあるが活力が切れている状態も、活力はあるが誇りを持てない状態も、この語では高い値にならない。

一時的な気分を指す語ではない

白書の説明は、この概念が「持続的かつ全般的な感情と認知」によって特徴づけられると書いている。特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態とは区別されている。今日の会議が上手くいったかどうかで動く指標として設計されていない、ということ。

日々の経験として多少は変動するが、基本的には持続的で安定した状態を捉える概念。白書はそう整理している。

似た語との距離は、2つの軸で測られている

白書は、活動水準と、仕事への態度・認知という2つの軸で、関連する概念を並べている。

概念 活動水準 仕事への態度・認知
ワーク・エンゲイジメント 高い 肯定的
ワーカホリズム 高い 否定的
職務満足感 低い 肯定的
バーンアウト(燃え尽き) 低い 否定的

ワーカホリズムは「過度に一生懸命に強迫的に働く傾向」と定義される(Schaufeli, Shimazu, & Taris 2009)。働く量が多いという一点では、ワーク・エンゲイジメントの高い状態と見分けがつかない。分かれるのは態度のほうで、外から労働時間だけを見ていても区別はつかない。

バーンアウトは「仕事に対して過度にエネルギーを費やした結果、疲弊した状態」と説明されている(島津 2016)。活動水準が落ちて、態度も否定的になる。手前にワーカホリズムがあったかどうかは、この2軸の図からは読み取れない。

測り方は、0から6までの7段階

測定にはユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)が使われる。17項目版と、9項目の短縮版がある。答え方は「まったくない」の0点から「いつも感じる(毎日)」の6点までの7件法。

日本語版の項目から、3つの下位尺度をひとつずつ。

  • 活力:仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる
  • 熱意:自分の仕事に、意義や価値を大いに感じる
  • 没頭:仕事をしていると、時間がたつのが速い

9項目版の内的整合性はα=.92と報告されている。各下位尺度の3項目を平均して、活力・熱意・没頭の得点を出す。合計点をひとつ出して終わりにすると、どこが高くてどこが低いのかは消える。

何が値を動かすかは、仕事の側と本人の側に分けて置かれている

日本語版UWESを紹介した同じ資料は、この状態を決める要因を2つに分けて図にしている。ひとつは組織と仕事が持っているもの。上司や同僚のサポート、仕事の裁量権、出来についてのフィードバック、コーチング、課題の多様性、訓練の機会。もうひとつは本人が持っているもので、こちらに挙がっているのは自己効力感だけ(Schaufeli & Bakker 2005 の UWES マニュアルに基づく整理として示されている)。

要因の一覧という以上に、どちら側に置かれているかが効いている。裁量権もフィードバックも上司の支援も、本人の内側には無い。自分の努力で動かせるのは、2つのうち片方だけ。

分けて置いてあると、落ちた原因を探すときに順番がつく。この半年で裁量の範囲や仕事の割り振り、フィードバックの頻度が変わったかを先に見て、変わっていなければ本人の側や回復の時間を見る(推定)。

同じ「エンゲージメント」でも、調査が違えば別の物差し

ここで混同が起きやすい。エンゲージメントという語を使う調査は他にもあり、測っている内容が同じとは限らない。たとえば日本の値として8%という数字が引かれるとき、その出所は別の調査で、設問も回答の刻み方も違う。数字の出どころはエンゲージメント推移、日本は8%にまとめた。

UWESの得点は0から6の連続量で、8%のような割合の形では出てこない。並べて比べる前に、どちらの物差しの話をしているかを確認する。

高得点をそのまま目標にしにくい理由

白書の第2節は、ワーク・エンゲイジメント・スコアと組織コミットメント、定着率・離職率、労働生産性などとの関係性を分析している。関係が見られたという報告であって、スコアを上げれば離職が減る、という順序を示したものではない。

尺度の中身にも注意がいる。17項目版の没頭の項目には、「仕事から頭を切り離すのが難しい」が含まれる。仕事に深く入り込んでいる状態を測る以上、回復の時間の取りにくさと重なる部分が残る(推定)。

平均そのものにも差がある。日本語版の検討では、9項目版の下位尺度について男性の平均が女性を上回ったと報告されている(熱意については性差なし)。年代による差も出ている。全体の平均と自分の点を比べて高い低いを決める作業は、比べる相手の属性しだいで結論が変わる。

3つのうち、どれが落ちているか

自分の状態を見るなら、3つを分けて置いたほうが手がかりになる。この2週間で、朝に仕事へ向かうときの体の重さはどうだったか。担当している仕事の意義を、人に説明できたか。作業に入ってから時間を忘れた場面が何回あったか。2つめが答えにくいときに何を見るかは、仕事に意味を感じないときに測るものに分けた。

3つのうち1つだけ落ちているなら、原因は仕事の中身か、睡眠か、役割の説明のどれかに寄っていることが多い。3つとも落ちているなら、担当している仕事の範囲よりも、勤務の間隔や休みの取れ方といった、回復にあてられる時間の側を先に数えたほうが手がかりになりやすい(推定)。4週ぶん記録すると、落ちているのがどれかまでは見える。原因までは見えない。

出典

  1. 令和元年版 労働経済の分析 第2章第3節(ワーク・エンゲイジメントの概念について)/厚生労働省/2019年
  2. ワーク・エンゲイジメント尺度の紹介(日本語版UWES)/島津明人/第81回日本産業衛生学会・2008年