仕事に意味を感じないときに測るもの

仕事に意味を感じない状態は、気持ちの持ち方より先に、担当している仕事の形から見たほうが早い。ハックマンとオールダムが1975年に発表した職務特性モデルは、技能の多様性・仕事の一貫性・仕事の重要性の3つが働く人の有意味感をつくり、裁量が責任感を、フィードバックが結果の知識をつくると整理している。つまり、意味は職務の設計から出てくる部分がある。自分の性格だけを掘っても、出口に着かないことがある。

まず、2つの「意味」を分ける

人生の目的としての「なぜ働くのか」と、いま担当している仕事の有意味感。この2つは別の問いです。

前者はお金・家族・社会との関わりなど、人によって答えが変わる。正解は無い。ここで扱うのは後者のほうで、担当の範囲や結果の届き先といった職務の形が変われば動くもの、つまり同じ会社に居続けたまま、担当が替わっただけで意味を感じたり感じなくなったりする部分です。

意味は5つの観測点に割れる

先週やった仕事を1つ思い浮かべて、次の5つに答えてみてほしい。

  • 技能の多様性 — その仕事で、自分の持っている技能のうちいくつを使ったか
  • 仕事の一貫性 — 始まりから終わりまでのどこを担当したか。全体の何分の1か
  • 仕事の重要性 — その結果を、誰が受け取るか。名前で言えるか
  • 裁量 — 進め方と順番を、どこまで自分で決めたか
  • フィードバック — 仕事そのものから、うまくいったかどうかが分かるか

このうち上の3つが有意味感に関わる、というのが職務特性モデルの整理です。裁量とフィードバックは、責任感と結果の知識のほうに効く。

答えてみると、たいてい全部が低いわけではない。多いのは、技能はひととおり使っていて進め方もある程度は任されているのに、結果を受け取る人だけが見えない、という偏り方で、分業が細かく分かれている職場ほどこの形になりやすい。能力の話でも姿勢の話でもありません。

「誰の役に立つか分からない」は経路の問題かもしれない

社会の役に立っている実感が無い、という言い方をされることがある。ただ、実際に役に立っていないのか、届いたかどうかを知る手段が無いだけなのかは、別々に確かめられる。

自分が作ったものが、次に誰の手に渡り、最終的に誰が使うのか。3ステップ先まで名前を挙げられるかどうかを試してほしい。挙げられないなら、まず経路を調べる。役に立っていないことと、届いた証拠が返ってこないことは違う。

経路が分かると、フィードバックの取りに行き方も決まる。自分の出したものを実際に使っている部署や取引先の担当者に「どこで使われましたか」と聞ける関係が1つできるだけで、仕事の重要性とフィードバックという2つの観測点が同時に動く。手間の割に効く。

意味が無いのか、活力が切れているのか

熱意が落ちている状態と、エネルギーが尽きている状態は、打つ手が違う。

ワークエンゲージメントは、仕事から活力を得ていきいきしている状態(活力)、仕事に誇りとやりがいを感じている状態(熱意)、仕事に熱心に取り組んでいる状態(没頭)の3つが揃ったものとして定義されていて、厚生労働省も令和元年版の労働経済の分析でこの定義を採っている。この3つのうち、いまどれが落ちているか。熱意だけが落ちていれば職務の形の話で、活力が落ちているなら量と休みの話です。定義と測り方はワークエンゲージメントの記事にまとめた。

睡眠が削られている時期に意味を問い始めることは、よくある。順番としては、量を先に確かめる。

いつから変わったのかを特定する

「見失った」という言い方をするとき、たいてい前は感じていた。だとすれば、変わった時点がある。

カレンダーを1年ぶんさかのぼる。そのうえで、次の出来事と重ねてほしい。担当範囲の変更、組織改編、主要顧客の入れ替わり、上司の交代、リモートと出社の比率が変わった時期。どれかと重なるなら、変わったのは職務の形のほうです。

重ならないこともある。その場合は、外から見える変化が無いまま、自分の基準が動いた可能性が残る。たとえば技能が上がって、以前は手応えのあった仕事が手応えを返さなくなる。これは後退ではありません。

転職した人が前職を辞めた理由のうち、「仕事の内容に興味を持てなかった」は男性5.2%、女性4.6%。厚生労働省の令和7年雇用動向調査の数値で、最多の理由ではない。順位表は転職理由ランキングの記事に載せた。意味の問題は、辞める理由としては単独で立ちにくい。

今週やること

  1. 先週の仕事を1つ選び、5つの観測点に1〜5で点を付ける。どこが低いかだけ見る
  2. その仕事の結果を受け取る人を、3ステップ先まで書き出す。書けない段で止める
  3. 活力・熱意・没頭のどれが落ちているかを、1つだけ選ぶ
  4. 意味を感じなくなった時期を、出来事と重ねて特定する

4つとも、10分で終わる。終わったら4週間あけて、もう一度同じ点を付けてみてください。低い観測点が動かないなら、職務の形のほうに手を入れる話になる。

答えが出ない週があってもいい。記録が残っていれば、次に考えるときの出発点が変わる。

出典

  1. Development of the Job Diagnostic Survey(職務特性モデルと職務診断調査)/J. R. Hackman・G. R. Oldham/Journal of Applied Psychology 60(2), 159-170/1975年
  2. 令和7年雇用動向調査 結果の概況(表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合)/厚生労働省/令和7年1年間・集計入職者数57,896人
  3. 令和元年版 労働経済の分析 第2章第3節(ワーク・エンゲイジメントの概念について)/厚生労働省/2019年