賞与は、支払の間隔で月例の給与と切り分けられている賃金のこと。額が大きいかどうかでも、業績に連動するかどうかでもない。社会保険では「3か月を超える期間ごとに受けるもの」、割増賃金の計算では「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」として、月々の給与の外に置かれる。そして支給そのものは、法律が会社に義務づけていない。
賞与とは、額が確定していない賃金
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賞与の線引きは、金額ではなく支払の間隔
労働基準法には「賞与」という独立した制度の規定がない。あるのは、賃金の一種としての扱いを決めた条文だけ。就業規則の記載事項を定めた第89条では、賞与は第4号の「臨時の賃金等」に入る。常時10人以上を使用する職場なら就業規則の作成と届出が義務なので、賞与制度があるなら、その内容は就業規則に書かれている。
社会保険の側はもっと明確に区切っている。日本年金機構の説明では、賞与として扱うのは年3回以下の支給で、年4回以上になるものは標準報酬月額の対象、つまり通常の報酬に入る。支払われた額から1,000円未満を切り捨てたものが標準賞与額で、上限は健康保険が年度の累計573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円。
税の側では名目を問わない。国税庁の説明では、賞与・ボーナス・夏期手当・年末手当・期末手当といった名目で支給されるものがまとめて賞与として扱われ、源泉徴収の計算方法も月例の給与とは別に決められている。呼び名が「寸志」でも「一時金」でも、年に何回支払われるか、どの間隔で支払われるかで扱いが決まる。
この線引きは残業代にも効く。割増賃金の算定基礎からは、賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除外できる(労働基準法第37条第5項)。賞与が年収の2割を占めていても、時間外の割増はその2割を含まない基礎額から計算される。
支給義務はない。ただし就業規則に書けば労働条件になる
賞与を支給する義務は、労働基準法にもほかの法律にもない。厚生労働省のモデル就業規則の解説にも、賞与は法律によって設けることが義務づけられているものではない、と書かれている。
義務が生じるのは、会社が自分で定めたとき。モデル就業規則は、賞与を支給する場合に就業規則へ明確にしておくべきものとして、支給対象時期・算定基準・査定期間・支払方法の4つを挙げている。ここに書かれた内容は労働条件になる。
パートタイムや有期雇用で働く人には、もう一段の手当てがある。雇入れに際して、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口を文書の交付等で明示しなければならない(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項)。雇用契約書か労働条件通知書に、賞与の有無が書かれているはずの箇所。
どう測るか——支給額・支給月数・支給事業所数割合
賞与の実額は、厚生労働省の毎月勤労統計調査の特別集計で測られている。この集計は、月々の「特別に支払われた給与」のうち賞与として支給された分を抜き出したもので、夏季賞与は6月から8月、年末賞与は11月から翌年1月の支給を集める。
公表される指標は4つに分かれる。
- 支給事業所における労働者一人平均賞与額。賞与を支給した事業所の常用労働者で割った額
- 支給事業所数割合。事業所の総数に対して、賞与を支給した事業所が占める割合
- 支給事業所に雇用される労働者の割合
- きまって支給する給与に対する支給割合。賞与が月例給の何か月分にあたるか
2025年の年末賞与(事業所規模5人以上、調査産業計)では、支給事業所における労働者一人平均が424,889円で前年比2.8%増、支給月数は1.08か月分だった。同じ年の夏季賞与は426,337円で、前年比2.9%増。
「平均424,889円」の分母には条件が付く
この424,889円は、賞与を支給した事業所だけを集めた平均。2025年の年末賞与で賞与を支給した事業所は、事業所総数の76.5%(前年は77.8%)。4分の1近くの事業所は、年末に賞与を出していない。
支給のない事業所まで分母に入れると、年末賞与の全労働者一人平均は367,529円になる。支給事業所の平均との差は約5.7万円。どちらの数字を見ているかで、自分の額が「平均より下」かどうかの判定が変わる。
事業所の規模でも分かれる。規模30人以上では一人平均490,695円、支給事業所数割合92.8%、支給月数1.22か月分。規模5人以上の全体と並べると、支給月数で0.14か月分の差。
産業ごとの幅はさらに大きい。2025年の年末賞与で支給事業所の一人平均がいちばん高かったのは電気・ガス業の941,438円で、いちばん低かったのは宿泊業・飲食サービス業等の90,551円、同じ年の同じ集計の中で10倍を超える開きがあり、産業をまたいで「平均より多いか少ないか」を比べても自分の位置はほとんど分からない。開きは10倍。
職場での現れ方は、算定式と在籍要件に出る
賞与の額をどう出すかは職場ごとに違うが、よく使われる型は3つに整理できる。基本給に支給月数と出勤率を掛ける基本給連動型、会社や部門の業績を基準に置く業績連動型、決算の結果が確定してから支給を決める決算賞与。どの型かによって、自分の評価が額にどう効くかが変わる。
算定対象期間と支給日の組み合わせも、就業規則に書かれる。モデル就業規則の第50条は、算定対象期間に在籍した労働者に対して支給日に支給する、という形をとっている。支給対象者を特定の日(6月1日や12月1日、または賞与支給日)に在籍した者とする規定を置けば、その日に在職しない人には支給しないこともできる。退職や転職の時期が賞与に関わるのは、この在籍要件が理由。
一方で、算定に入れてはいけないものもある。年次有給休暇を取得した日を欠勤として扱い、賞与の額の算定で不利益にすることは禁じられている(労働基準法附則第136条)。有給を使った月の賞与が下がっていたら、就業規則の算定式を確かめる根拠になる。
賞与から引かれるものは、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料と、所得税。労災保険料に本人負担はない。額面と振込額の差が月例給より大きく見えることがあるのは、賞与の源泉徴収税額が前月の給与から求めた率で計算される仕組みになっていて、前月に残業が多かった月の賞与ほど高い率が当たるためで、ここは国税庁の算出率の表が決めている。
賞与が前回より減っていた場合、原資・配分の基準・自分の査定のどこで差がついたのかを切り分ける手順は、賞与が減った基準はどこにあるかに書いた。月例給の側の引き上げについてはベースアップとは、賃金表の書き換えが扱っている。
自分の職場で確かめる
賞与について自分で確かめられるのは、次の4つ。
- 就業規則の賞与の条文。算定対象期間、支給日、支給対象者の要件
- 雇用契約書または労働条件通知書の賞与の欄(パート・有期雇用なら明示義務の対象)
- 直近の賞与明細の額面と、きまって支給する給与の額。割ると自分の支給月数が出る
- 算定対象期間中の欠勤・有給取得の記録
4つ目まで揃うと、額の増減が原資の変動なのか、出勤率や査定の反映なのかを分けて考えられる。給与の決まり方そのものを上司に聞く段取りは、給与の決まり方の聞き方にまとめてある。
賞与の額は職場の条件のひとつで、それだけで働く場所の合う・合わないは決まらない。何が評価されて処遇に反映されるのか、裁量や学べる量はどうか。条件を分けて記録しておくと、次の面談や異動の判断で使える材料になる。





