2025年の賞与は、夏季が426,337円、年末が424,889円。どちらも厚生労働省の毎月勤労統計調査の特別集計で、事業所規模5人以上・調査産業計の、賞与を支給した事業所における労働者一人平均の額になる。月例給に対する支給月数は夏季1.02か月分、年末1.08か月分。ただしこの「平均」には分母の条件が付いていて、支給していない事業所まで含めると年末は367,529円まで下がる。
賞与の平均は42万円台、産業差10倍
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「平均」が2種類ある
毎月勤労統計調査の賞与の特別集計は、平均額を2通りで出している。混ぜると自分の位置を読み間違える。
- 支給事業所における労働者一人平均賞与額。賞与を支給した事業所の常用労働者で割った額
- 全事業所における労働者一人平均賞与額。賞与を支給していない事業所の労働者まで分母に入れた額
2025年の年末賞与では、前者が424,889円、後者が367,529円。差は約5.7万円で、比率にすると13%ほど。報道や解説で「平均○万円」と出てくる数字は、たいてい前者のほう。
分母の違いが生まれる理由は、支給事業所数割合にある。2025年の年末賞与を支給した事業所は、事業所総数の76.5%(前年は77.8%)。夏季はさらに低く73.4%。つまり支給事業所の平均だけを見ている限り、賞与を出していない4分の1前後の事業所で働く人は集計のどこにも現れないまま、額の水準だけが実態より高く見える構造になっている。
事業所規模で取れる区分は2つだけ
この特別集計で公表される規模の区分は、事業所規模5人以上と30人以上の2つ。1,000人以上のような大きい括りは無い。
| 区分 | 夏季賞与 | 年末賞与 |
|---|---|---|
| 規模5人以上・支給事業所の一人平均 | 426,337円 | 424,889円 |
| 規模30人以上・支給事業所の一人平均 | 496,889円 | 490,695円 |
| 規模5人以上・支給月数 | 1.02か月分 | 1.08か月分 |
| 規模30人以上・支給月数 | 1.17か月分 | 1.22か月分 |
| 規模5人以上・支給事業所数割合 | 73.4% | 76.5% |
| 規模30人以上・支給事業所数割合 | 91.2% | 92.8% |
規模30人以上は規模5人以上を含む括りなので、両者の差を引き算して「30人未満」を出すことはできない。それでも、支給事業所数割合が73.4%と91.2%で18ポイント近く開いている点は読める。小さい事業所ほど、支給の有無そのものが分かれる。
支給月数の差も同じ方向に出ている。年末で1.08か月分と1.22か月分。額の差の多くは、基礎になる月例給の差と、この0.14か月分から来ている。
産業で10倍の開き
同じ2025年の年末賞与を産業別に並べると、額の幅は平均1本では見えなくなる。
| 産業 | 支給事業所の一人平均 | 支給月数 | 支給事業所数割合 |
|---|---|---|---|
| 電気・ガス業 | 941,438円 | 1.86か月分 | 94.0% |
| 情報通信業 | 746,758円 | 1.35か月分 | 80.4% |
| 金融業,保険業 | 671,180円 | 1.56か月分 | 93.2% |
| 学術研究等 | 630,569円 | 1.30か月分 | 85.8% |
| 鉱業,採石業等 | 619,457円 | 1.06か月分 | 100.0% |
| 教育,学習支援業 | 611,400円 | 1.59か月分 | 83.6% |
| 不動産・物品賃貸業 | 572,296円 | 1.61か月分 | 85.9% |
| 製造業 | 571,854円 | 1.10か月分 | 82.7% |
| 建設業 | 564,364円 | 1.15か月分 | 80.3% |
| 複合サービス事業 | 512,750円 | 1.80か月分 | 98.1% |
| 運輸業,郵便業 | 390,665円 | 0.99か月分 | 79.7% |
| 卸売業,小売業 | 364,408円 | 1.01か月分 | 74.7% |
| 医療,福祉 | 314,546円 | 0.97か月分 | 83.0% |
| その他のサービス業 | 253,436円 | 1.14か月分 | 79.6% |
| 生活関連サービス等 | 194,018円 | 0.72か月分 | 56.5% |
| 飲食サービス業等 | 90,551円 | 0.46か月分 | 51.3% |
上端の電気・ガス業941,438円と下端の飲食サービス業等90,551円で、10.4倍。調査産業計の424,889円という1つの数字は、この16産業をまとめて割った結果なので、自分の職場の産業の行と比べない限り、平均より多いか少ないかという判定そのものがほとんど意味を持たなくなる。16産業のうち調査産業計を上回るのは10産業。
支給月数のほうを見ると、別の並びが出てくる。不動産・物品賃貸業は額が572,296円で製造業と近いが、支給月数は1.61か月分と1.10か月分で差がある。月例給の水準が違うため、同じ額でも「何か月分か」は一致しない。
支給事業所数割合の下端も産業に偏る。飲食サービス業等は51.3%、生活関連サービス等は56.5%。この2産業では、賞与のある職場とない職場がほぼ半分に割れている。
増えているのは額か、支給月数か
前年比は5年続けて増えている。2021年から2025年の支給事業所の一人平均の前年比(事業所規模5人以上、調査産業計)は、夏季が−0.8%、2.4%、2.0%、2.3%、2.9%、年末が0.1%、3.2%、0.7%、2.5%、2.8%。
ただし、増え方の中身は分けて見る必要がある。2025年の年末賞与は額が2.8%増えた一方で、支給月数は1.07か月分から1.08か月分へ0.01か月分しか動いていない。支給事業所数割合は77.8%から76.5%へ下がり、支給事業所に雇用される労働者の割合も87.3%から86.5%に下がった。
つまり額の伸びの大部分は、賞与の月数が増えたのではなく、基礎になる月例給が上がったことの反映として読める。月例給の引き上げの仕組みはベースアップとは、賃金表の書き換えにまとめてある。
産業ごとの前年比にも、方向の違いが出た。2025年の年末賞与で複合サービス事業は12.6%増、学術研究等は7.1%増。逆に卸売業,小売業は2.5%減、運輸業,郵便業は2.0%減、電気・ガス業も0.2%減。全体が増えた年でも、減った産業がある。
この数字で言えないこと
3つある。
第一に、年齢や勤続年数ごとの額は分からない。この特別集計は事業所を単位に集めていて、年齢別の区分を持たない。年代別の賞与額を出している記事は、別の調査を使っている。
第二に、同じ産業の中のばらつきは見えない。産業別の941,438円や90,551円は、その産業の事業所をまとめた平均。自分の職場がその平均の上か下かは、この表からは判定できない。
第三に、支給月数の分母である「きまって支給する給与」は、基本給だけではない。毎月決まって支給される手当を含む額に対する割合として計算されているので、求人票や社内の資料で「基本給の○か月分」と書かれた数字をこの1.08か月分と並べると、分母が違うまま比べることになる。自分の支給月数は、賞与額をきまって支給する給与の額で割れば出る。
自分の額をどこに置くか
比べる相手を決めてから数字を当てる。順序は3つ。
- 産業。自分の職場が属する産業の行を見る。調査産業計の424,889円ではなく、その行の額と支給月数を基準にする
- 事業所規模。勤務先の事業所が30人以上かどうかで、支給事業所数割合が73.4%と91.2%ほど違う
- 支給月数。自分の賞与額を、きまって支給する給与の額で割る。額の比較より、こちらのほうが産業をまたいでも読める
その上で、前回との差が原資の変動なのか配分の基準の変更なのか自分の査定なのかを切り分ける手順は、賞与が減った基準はどこにあるかに書いた。賞与の額は職場の条件のひとつ。評価の対象と反映の経路を上司に確かめる段取りは給与の決まり方の聞き方が扱っている。
平均との距離が分かっても、それだけでは自分に合う条件は決まらない。処遇のほかに、裁量の幅、学べる量、人と接する頻度。条件を分けて記録しておくと、次の面談や異動の判断で使える材料になる。





