賞与が減った基準はどこにあるか

賞与が減ったとき、確かめる場所は3つある。会社がその期に賞与へ回した原資、配分の基準、自分の査定。振込額の差だけを見ていると、原資が縮んだのか、配分の決まりが書き換わったのか、自分の査定が下がったのかを切り分けられないまま、次の算定期間が始まって支給日が来る。

聞く相手も、3つのどれかによって変わる。原資なら会社の業績説明、配分なら就業規則、査定なら直属の上司。

減った額は「原資 × 配分」でできている

賞与は、会社が賞与へ回すと決めた総額に、その中での自分の取り分を掛けたもの。総額が2割減れば、査定が前回と同じでも振込額は減る。総額が動かないまま、自分の配分だけが下がることもある。まずはどちらが動いたかを分けて見る。

会社が賞与へ回す額は、年によって実際に動く。厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年確報、事業所規模5人以上)では、賞与を含む「特別に支払われた給与」が労働者1人あたり月平均68,514円で、前年比3.8%増だった。ただし産業別に開く。電気・ガス業の12.9%増から、運輸業,郵便業の3.8%減まで。同じ年に、増えた産業と減った産業が並んでいる。

自分の勤め先の原資が動いたかどうかは、社内で流れる情報から拾える。決算の説明、期初の方針共有、労働組合がある職場なら妥結の連絡。部署ごとに配分枠を持つ会社では、会社全体の数字が前年並みでも、自分の部署の目標達成率が下がっていればそこで枠が細り、同じ査定でも配られる額が減る。ここで「会社全体は前年並みだった」と分かれば、減った理由は配分か査定の側にある。

基準が書いてあるのは就業規則か賃金規程

賞与の算定方法は、就業規則か、そこから分かれた賃金規程に書かれている。労働基準法89条は、賞与のような臨時の賃金について、定めをする場合には記載するよう求めている。制度として賞与を置くなら、条件を書き出す義務がある。

読むときに見る箇所は4つ。

  • 算定期間(いつからいつまでの働きを見て決めるか)
  • 支給日在籍要件(支給日に在籍していることが条件になっているか)
  • 算定方法(基本給の何か月分か、等級ごとの定額か、会社業績からの配分か)
  • 減額や不支給の条件(欠勤、休職、育児休業、懲戒などの扱い)

規程が手元になくても、就業規則は労働基準法106条で労働者への周知が義務づけられているため、掲示・備付け・書面の交付・社内ネットワークでの閲覧のどれかで読める状態になっているはずで、見当たらなければ人事に開示を求められる。社内のファイルサーバーや勤怠システムに置いてある会社も多い。

支給額が「会社の業績に応じて決定する」とだけ書かれていることもある。この書き方だと、算定式そのものが開示されていない状態になる。何が分からないのかが分かる、という意味では、これも読んだ収穫。

算定方法の型で、確かめる先が変わる

基本給連動型なら、基本給と支給月数のどちらが変わったかを見る。基本給が同じで月数が減ったなら、原資か査定係数の側が動いている。基本給そのものが下がっているなら、話の行き先は昇給のほうへ移る。

等級ごとの定額型では、等級が変わっていないのに額が変われば、会社が定額のテーブルを書き換えたことになる。テーブルは規程の別表に載っている。

業績配分型が一番たどりにくい。会社または部署の業績指標、配分の原資、個人の評価点という3段が掛かるので、どこで落ちたかは1つずつ聞くほかない。それでも、聞く順番は決まる。会社の業績 → 部署の配分 → 自分の評価点。

説明が無いときに、何を聞くか

賞与の減額について、会社から説明が来ないことはある。給与明細に内訳が載らない会社も多い。待っていても情報が出てこない場合、こちらから聞く形になる。

聞き方は、評価への不服ではなく、基準の確認として組み立てる。

  • 「今回の賞与の算定期間はいつからいつまででしょうか」
  • 「会社全体の賞与原資は前年と比べて変わりましたか」
  • 「私の評価点は前回から動いていますか。動いていれば、どの項目でしょうか」
  • 「次の算定期間で見られる項目を教えてください」

最後の1つが、次の支給に効く。過ぎた査定の判定は動かないが、次の期間の基準は先に聞ける。1on1の時間があるなら、そこが場として使いやすい(1on1で何を話すかに、話す材料の作り方をまとめてある)。

人事に聞くか、上司に聞くかは、聞く内容で分ける。原資と規程は人事、自分の評価点は上司。両方を同じ相手に一度に投げると、その人が答えを持っていない部分が混ざり、答えられる範囲の話に寄って「会社の業績が厳しくて」で終わりやすい。

次の支給までに記録しておくもの

賞与が見ているのは、支給日の直前の働き方ではない。多くの会社で、夏の賞与は前年10月から3月まで、冬の賞与は4月から9月あたりまでを算定期間に置いていて、支給日から見れば半年前の働き方がそこに入っている。今月の実感と、査定の対象になった時期は、それだけずれている。

だから記録は、支給日を待たずに取る。算定期間のうちに残すものは3つでいい。

  1. 担当した仕事と、その結果の数字(件数、金額、期間の短縮幅)
  2. 期初に合意した目標と、期中に変わった部分
  3. 上司から受けたフィードバックの日付と中身

これが残っていると、次に説明を求めるときの入口が変わる。「減った気がする」から始めるかわりに、「この期間はこの目標で、結果はこうだった」と置いて話せる。評価の結果を変える保証はないが、どの項目で見られているかは確かめられる。

記録が4回分、つまり2年ぶんたまると、会社の原資の動きと自分の配分の動きを重ねて並べられるようになり、業績が上下しても自分の配分比が一定なのか、業績が横ばいのまま配分だけが下がり続けているのかが、はじめて別々の線として見える。ここまで分かれば、次に何を話すかの材料になる。

給与の決まり方そのものを聞きたい場合は、給与の決まり方の聞き方に、面談での切り出し方をまとめてある。基本給の上がり方が気になるならベースアップと定期昇給の違いのほうが近い。

出典

  1. 毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報(厚生労働省、事業所規模5人以上、特別に支払われた給与68,514円・産業別前年比)
  2. 毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報 統計表一覧(厚生労働省)
  3. 労働基準法(第89条 作成及び届出の義務、第106条 法令等の周知義務)/e-Gov法令検索