賞与の計算、額面から手取りまで

賞与の振込額は、額面から社会保険料を引き、残りに所得税の率を掛けて引いた額。月例給と違うのは、所得税の率が前月の給与から決まる点と、社会保険料の計算に1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」を使う点の2つ。令和8年度の率で40万円の賞与を追うと、額面の約2割が控除になる。

額面が決まるところまでは、就業規則の話

賞与の額そのものを決める式は、法律にない。厚生労働省のモデル就業規則の第50条は、算定対象期間に在籍した労働者に対し会社の業績等を勘案して支給日に支給する、という形で、額は会社の業績および労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する、としている。解説では、賞与を支給する場合に就業規則へ明確にしておくべきものとして支給対象時期・算定基準・査定期間・支払方法の4つを挙げている。

よく使われる型は3つ。基本給に支給月数と出勤率を掛ける基本給連動型、会社や部門の業績を基準に置く業績連動型、決算の結果が確定してから支給額を決める決算賞与。自分の職場がどれかで、額の動き方が変わる。

出勤率を掛ける算定式がある場合は、制約を1つ覚えておく価値がある。年次有給休暇を取得した日を欠勤として扱い、賞与の額の算定で不利益にすることは労働基準法附則第136条で禁じられている。

自分の支給月数は明細から逆算できる。賞与額を、きまって支給する給与の額で割る。参考として、2025年の年末賞与の支給月数は事業所規模5人以上の調査産業計で1.08か月分、規模30人以上で1.22か月分だった。

社会保険料は、標準賞与額に率を掛ける

ここから控除の計算。日本年金機構の説明では、賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、それに健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額になる。保険料は事業主と被保険者が折半で負担する。

掛ける率は4つに分かれる。

  • 健康保険料率。全国健康保険協会の令和8年度の都道府県単位保険料率は9.21%から10.55%の範囲で、都道府県ごとに違う。令和8年3月分(4月納付分)から改定
  • 介護保険料率。40歳以上65歳未満の人が負担する全国共通の率で、令和8年度は1.62%
  • 厚生年金保険料率。18.300%(平成29年9月1日から適用)で、折半額は9.150%
  • 雇用保険料率。一般の事業の労働者負担は令和8年度が5/1,000

ここに注意点が1つある。折半なのは健康保険と厚生年金保険のほうで、雇用保険料は折半ではない。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの一般の事業では、労働者負担5/1,000に対して事業主負担が8.5/1,000、合計13.5/1,000。折半だと思って検算すると、雇用保険料のところで合わなくなる。

標準賞与額には上限もある。健康保険は年度の累計額573万円(年度は4月1日から翌年3月31日まで)、厚生年金保険は1か月あたり150万円。上限に達した分より先の賞与には、その保険の保険料がかからない。

なお令和8年4月分(5月納付分)からは、子ども・子育て支援金制度の創設により0.23%が加わる。下の計算例には入れていない。

所得税の率は、前月の給与で決まる

賞与の源泉徴収税額は、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で率を求めてから計算する。手順は3つ。

  1. 前月中の給与等の金額から、その給与等から控除される社会保険料等の金額を引いた額を出す
  2. 扶養控除等申告書で申告された扶養親族等の数と、1で出した額に応じて、甲欄の「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」欄の該当する行を求める
  3. その行と「賞与の金額に乗ずべき率」欄の交わるところの率を、賞与から社会保険料等を差し引いた金額に掛ける

扶養親族等0人なら、前月の社会保険料等控除後の給与が94千円以上260千円未満で4.084%、260千円以上309千円未満で6.126%、309千円以上342千円未満で8.168%。前月に残業が多かった人ほど高い率の行に入る。つまり同じ額面の賞与でも、前月の給与が違えば手取りが違う。

扶養控除等申告書を出していない場合は乙欄を使う。扶養親族等0人の乙欄は、前月の社会保険料等控除後の給与が224千円未満で10.210%、224千円以上295千円未満で20.420%。

例外も2つある。賞与の額が前月の給与の10倍を超える場合と、前月に給与の支払がない場合。どちらもこの表ではなく月額表を使い、賞与から社会保険料等を差し引いた金額を6(または12)で割って計算する別の手順になる。

40万円の賞与を順に追う

条件を置く。額面400,000円、40歳未満、一般の事業、扶養親族等0人、前月の社会保険料等控除後の給与が300,000円、健康保険料率を10.00%と仮定する。

項目 計算 金額
標準賞与額 400,000円(1,000円未満の端数なし) 400,000円
健康保険料 400,000円 × 10.00% ÷ 2 20,000円
厚生年金保険料 400,000円 × 18.300% ÷ 2 36,600円
雇用保険料 400,000円 × 5/1,000 2,000円
社会保険料等の合計 20,000円 + 36,600円 + 2,000円 58,600円
課税対象額 400,000円 − 58,600円 341,400円
所得税 341,400円 × 6.126% 20,914円
振込額 400,000円 − 58,600円 − 20,914円 320,486円

控除の合計は79,514円で、額面の19.9%。手取りは額面の約8割という見当は、この水準から来ている。

40歳以上65歳未満なら、介護保険料率1.62%の折半分として400,000円 × 0.81% = 3,240円が加わる。扶養親族等が1人いれば、前月の社会保険料等控除後の給与が300,000円でも甲欄1人の行は250千円以上289千円未満を超えて289千円以上346千円未満に入るので、率は6.126%のまま。扶養親族等3人なら300千円は「300千円以上354千円未満」の行で4.084%に下がる。

明細の読み方でつまずきやすい3点

まず、年4回以上支給されている場合。日本年金機構の扱いでは、賞与として標準賞与額の対象になるのは年3回以下の支給で、年4回以上になるものは標準報酬月額の対象、つまり毎月の報酬に組み入れられる。明細に標準賞与額の記載があるかどうかで、どちらの扱いか見当が付く。

次に、退職の直前に支給された賞与。社会保険の資格を喪失した月に支給された賞与では、保険料が控除されない場合がある。同じ額面でも控除の内訳が変わるので、前回の明細と単純に比べられない。

最後に、支給月数の分母。きまって支給する給与は基本給だけではなく、毎月決まって支給される手当を含む。求人票の「基本給の○か月分」とは分母が違う。

額面が前回より減っていた場合、原資・配分の基準・自分の査定のどこで差がついたのかを切り分ける手順は賞与が減った基準はどこにあるかに書いた。月例給そのものの引き上げの仕組みはベースアップとは、賃金表の書き換えが扱っている。

自分の明細で検算する

次の賞与までに手元に揃えておくと、計算が追える。

  1. 就業規則の賞与の条項。算定対象期間、支給日、算定基準
  2. 前月の給与明細。社会保険料等を控除したあとの支給額
  3. 扶養控除等申告書に書いた扶養親族等の数
  4. 勤務先の事業所がある都道府県の健康保険料率

4つが揃えば、額面から振込額までの計算を自分でやり直せる。差が出たら、健康保険料率か扶養親族等の数か、前月の給与の帯のどれかを見直す。処遇の根拠そのものを上司に確かめる段取りは給与の決まり方の聞き方にまとめてある。

出典

  1. 賞与に対する源泉徴収(国税庁 タックスアンサー No.2523)
  2. 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)(国税庁 令和8年分源泉徴収税額表)
  3. 標準報酬月額・標準賞与額の決め方(日本年金機構、標準賞与額の上限・1,000円未満切捨て・年3回以下の支給)
  4. 厚生年金保険料額表 一般・坑内員・船員の被保険者の方(令和8年度版)(日本年金機構、厚生年金保険料率18.300%)
  5. 令和8年度の保険料率(全国健康保険協会、都道府県単位保険料率・介護保険料率1.62%・子ども・子育て支援金率0.23%)
  6. 令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内(厚生労働省、令和8年4月1日〜令和9年3月31日)
  7. 毎月勤労統計調査 2026年2月分結果速報等(厚生労働省、特別集計 2025年年末賞与の支給月数)
  8. モデル就業規則(厚生労働省、令和7年12月版、第50条 賞与とその解説)
  9. 労働基準法(附則第136条 年次有給休暇取得者の不利益取扱いの禁止)/e-Gov法令検索