賞与の基準は就業規則の中にある

賞与の支給基準を決めているのは、法律ではなく会社。労働基準法は賞与の額の決め方を定めておらず、就業規則の「臨時の賃金等」として会社が自分で書いた内容が、そのまま労働条件になる。だから自分の賞与が何を基準に決まっているかは、就業規則の賞与の条項を読むほかに確かめる道がない。ただし裁量の外側には、いくつか制約がある。

基準が書かれる場所は決まっている

労働基準法第89条は、就業規則に書かなければならない事項を列挙している。賞与は第4号の「臨時の賃金等」にあたる。常時10人以上の労働者を使用する職場なら、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署長への届出が義務なので、賞与制度があるなら条項がある。

厚生労働省のモデル就業規則の解説は、賞与を支給する場合に就業規則へ明確にしておくべきものを4つ挙げている。

  • 支給対象時期
  • 賞与の算定基準
  • 査定期間
  • 支払方法

この4つが、支給基準と呼ばれるものの中身。条文のほうは第50条で、算定対象期間に在籍した労働者に対し会社の業績等を勘案して支給日に支給する、という形をとり、額は会社の業績および労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する、と書いている。

就業規則が見つからないときは、労働契約書か労働条件通知書を見る。パートタイムや有期雇用で働く人には、雇入れに際して昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口を文書の交付等で明示する義務がある(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項)。そこが基準を確かめる最初の資料になる。

算定基準は3つの型に分かれる

支給基準のうち、額を出す部分の組み方は大きく3つ。

  1. 基本給連動型。基本給に支給月数を掛けるのが骨格で、出勤率や人事考課の係数を重ねる形もある
  2. 業績連動型。会社や部門の業績を基準に置き、個人の評価を掛け合わせる
  3. 決算賞与。決算の結果が確定してから支給額を決める

どの型かで、自分の額が動く理由が変わる。基本給連動型なら、月例給が上がらないかぎり賞与も伸びにくい。業績連動型は、自分の評価が変わらなくても会社の業績で上下する。決算賞与は、支給の時期そのものが決算期のあとに寄る。

基準に入る考慮要素としては、勤怠の状況、査定期間中の評価、会社の業績、勤続年数などが組み合わされる。どれにどれだけの重みを置くかは会社が決める部分で、裁量は広い。自分の額の根拠を追うには、算定式そのものより先に、査定期間がいつからいつまでかを確かめたほうが早い。

参考として、2025年の年末賞与の支給月数は事業所規模5人以上の調査産業計で1.08か月分、規模30人以上で1.22か月分だった(厚生労働省の毎月勤労統計調査の特別集計)。自分の支給月数は、賞与額をきまって支給する給与の額で割れば出る。

在籍要件と勤怠要件が、額の前に効く

支給基準には、額を計算する前の関門が置かれることがある。モデル就業規則の解説は、賞与の支給対象者を一定の日(6月1日や12月1日、または賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職してその日に在職しない人には支給しないこととすることも可能だ、としている。

この要件があると、査定期間をまるごと働いていても、基準日に在籍していなければ対象から外れる。退職が決まっている人の扱いが職場ごとに違うのは、ここの書き方が違うため。

もう1つ、支給そのものを留保する条項がある。モデル就業規則の第50条には、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により支給時期を延期し、又は支給しないことがある、というただし書きが置かれている。同じ文言を採っている職場では、支給基準を満たしていても支給が動く余地が規定の中にある。

裁量の外にある制約

会社が自由に決められる範囲は広い。それでも、基準の中身に枠をかけている決まりが3つある。

第一に、年次有給休暇の取り扱い。有給を取得した日を欠勤として扱い、賞与の額の算定で不利益にすることは労働基準法附則第136条で禁じられている。出勤率を掛ける算定式がある職場では、ここが確かめどころになる。

第二に、雇用形態による待遇差。短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号)は、賞与の性質・目的には労務の対価の後払いや功労報償といった複数のものが含まれるとし、それらの性質・目的が当てはまるにもかかわらず、通常の労働者との職務の内容等の相違に応じた均衡のとれた内容を支給しない場合には、不合理と認められるものに当たりうる、としている。正社員としての職務を遂行しうる人材の確保と定着を図るという目的があること、それだけを理由に待遇の相違が不合理でないと当然に認められるわけではない、とも書かれている。

第三に、就業規則そのものの効力。いったん書かれた基準は労働条件になるので、会社は書いたとおりに支給する義務を負う。基準を知ることは、その義務の中身を知ることでもある。

基準の有無そのものが職場で分かれている

支給基準を読む前に、賞与制度があるかどうかが分かれる。2025年の年末賞与を支給した事業所は、事業所総数の76.5%(前年は77.8%)。夏季はさらに低く73.4%。

規模でも割れる。年末賞与の支給事業所数割合は、事業所規模30人以上で92.8%、規模5人以上の全体で76.5%。小さい事業所ほど、支給基準の有無そのものが先に来る。

産業による差も大きい。年末賞与の支給事業所数割合は、複合サービス事業98.1%、金融業・保険業93.2%、電気・ガス業94.0%に対して、飲食サービス業等は51.3%、生活関連サービス等は56.5%。この2産業では、賞与のある職場とない職場がほぼ半分に割れている。支給月数も飲食サービス業等0.46か月分、生活関連サービス等0.72か月分と、調査産業計の1.08か月分を大きく下回る。

自分の基準を読む順序

就業規則を見られる状態になったら、4か所を順に読む。

  1. 査定期間(算定対象期間)。いつからいつまでの勤務が対象か
  2. 支給対象者の要件。在籍を問う基準日、勤怠の要件、試用期間中の扱い
  3. 算定基準。基本給連動か業績連動か、出勤率や考課の係数が入るか
  4. ただし書き。支給時期の延期や不支給の定めがあるか

読めたら、直近の賞与額をきまって支給する給与の額で割って、自分の支給月数を出す。査定期間中の欠勤と有給取得の日数も一緒に書き出しておくと、次の支給で額が動いたときに、原因を基準の側か自分の記録の側かに寄せて考えられる。

前回より減っていた場合の切り分けと、誰に何を聞くかは賞与が減った基準はどこにあるかに書いた。基準の土台にある月例給の決め方そのものについては給与の決まり方の聞き方とベースアップとは、賃金表の書き換えが扱っている。

賞与の支給基準は、職場の条件を測る1本の軸。何が評価され、どの経路で処遇に反映されるのか。そこを言葉にして記録しておくと、面談や異動の判断で使える材料になる。

出典

  1. モデル就業規則(厚生労働省、令和7年12月版、第50条 賞与とその解説)
  2. 労働基準法(第89条 就業規則の記載事項、附則第136条 年次有給休暇取得者の不利益取扱いの禁止)/e-Gov法令検索
  3. 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(第6条 労働条件に関する文書の交付等)/e-Gov法令検索
  4. 同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針、平成30年厚生労働省告示第430号)の改正の概要/厚生労働省岐阜労働局
  5. 毎月勤労統計調査 2026年2月分結果速報等(厚生労働省、特別集計 2025年年末賞与、支給事業所数割合・支給月数・産業別)
  6. 毎月勤労統計調査 2025年9月分結果速報等(厚生労働省、特別集計 2025年夏季賞与、支給事業所数割合)