ワーク・エンゲイジメントが高い正社員と低い正社員のあいだで、いちばん大きく開くのは「仕事を通じて、成長できている」という実感で、その差は1.72ポイント。厚生労働省が令和元年版の労働経済の分析で、労働政策研究・研修機構の正社員調査(2019年3月実施、有効回収16,752件)の個票を集計した結果である。次に開くのが自己効力感の1.51、キャリア展望の1.49。逆に差が小さかったのは「自身に業務が集中している」の0.65だった。忙しさの多寡よりも、成長と見通しのほうが大きく分かれている。
エンゲージメントが低い理由、差は成長実感
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高い者と低い者は、どう区切られているか
この集計では、ワーク・エンゲイジメント・スコアが4.5以上の人を「高い者」、3.0以下の人を「低い者」としている。スコアは「活力」「熱意」「没頭」について、感じる頻度を「いつも感じる=6」「よく感じる=4.5」「時々感じる=3」「めったに感じない=1.5」「全く感じない=0」と置き換えた値の平均。4.5以上は「よく感じている」以上、3.0以下は「時々感じる」から下に当たる。
言葉の中身はワークエンゲージメントとは何の状態かに整理してある。国際比較での日本の位置はエンゲージメント推移、日本は8%。
差が大きい順に、9つの認識を並べる
同じスコア化(0〜6)で仕事への認識を聞き、高い者と低い者の平均を引き算したものが下の表。左が高い者、中が低い者、右が差。
| 仕事に対する認識 | 高い者 | 低い者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 仕事を通じて、成長できている | 4.33 | 2.61 | 1.72 |
| 自己効力感(仕事への自信)が高い | 3.92 | 2.41 | 1.51 |
| 勤め先企業でのキャリア展望が明確になっている | 3.17 | 1.68 | 1.49 |
| 働き方への満足感 | 4.10 | 2.71 | 1.39 |
| 仕事の遂行に当たっての人間関係が良好である | 4.30 | 3.15 | 1.15 |
| 仕事の裁量度が高い | 4.30 | 3.17 | 1.14 |
| 職場にロールモデルとなる先輩社員がいる | 2.87 | 1.83 | 1.05 |
| 労働時間の半分以上はハイスピードで仕事をしている | 3.59 | 2.74 | 0.85 |
| 自身に業務が集中している | 3.32 | 2.67 | 0.65 |
上位の3つは、いずれも今の仕事が自分の先とどうつながっているかに関わる項目である。成長、自信、そして見通し。
キャリア展望の水準に注目したい。高い者でも3.17で、6点満点の真ん中あたりにとどまる。低い者は1.68なので「めったに感じない」に近い。高い者・低い者のどちらで見ても、9項目の中で水準がいちばん低いのがこの項目である。会社の中での先行きが見えている人は、スコアが高い側にもそう多くない。
ロールモデルの有無も同じ形をしている。高い者2.87、低い者1.83。白書はこの項目について、29歳以下で相関の強さが他の年齢階級より高い可能性を指摘している。
忙しさでは、スコアは分かれなかった
差が小さかった2項目は、どちらも仕事の詰まり具合を聞いたものだった。「労働時間の半分以上はハイスピードで仕事をしている」が0.85ポイント、「自身に業務が集中している」が0.65ポイント。しかも、どちらも高い者のほうがスコアが高い。つまり、速く働いていて業務が自分に集まっている人ほどエンゲージメントが低い、という関係は出ていない。
負荷の量ではなく、その負荷が何につながっているか。ここで分かれている。
会社の取組の差は、最大5.62%ポイント
同じ白書は、高い者と低い者の勤め先で実施されている雇用管理の実施率も比べている(第2-(3)-20図)。差がついた順に見ると、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が68.57%対62.95%で5.62%ポイント、「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が54.10%対48.48%で同じ5.62%ポイント、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」が40.88%対36.66%で4.22%ポイント。
一方、ほとんど差のつかなかった取組もある。「経営戦略情報、部門・職場での目標の共有化、浸透促進」は0.28%ポイント、「長時間労働対策やメンタルヘルス対策」は0.35%ポイント、「能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援」は0.51%ポイント。制度として実施されているかどうかでは、ほとんど分かれていない。
制度の有無で最大5.62%ポイント、本人の認識では最大1.72ポイント(0〜6のスケール上で約29%に当たる幅)。単位が違うので直接は比べられないが、少なくとも、同じ制度がある会社の中でスコアが高い人と低い人に分かれている、という状態は読み取れる。
この数値から言えないこと
相関の記述であって、因果ではない。成長実感が低いからスコアが下がったのか、スコアが低いから成長を感じにくくなっているのか、この集計では決まらない。白書自身も「正の相関がある可能性が予想される」という書き方をしている。
調査時点は2019年3月で、感染症の流行と在宅勤務の広がりより前。対象は正社員のみで、パートタイムや契約社員は入っていない。雇用管理の実施率は、正社員調査に企業調査(有効回収4,599件)の回答を接続して集計した値なので、本人が制度を知っているかどうかとは別。
自分の側で数えられる項目
9項目のうち、成長実感、自己効力感、キャリア展望、裁量度、ロールモデルの有無は、自分で同じ5段階(いつも・よく・時々・めったに・全く)に当てて答えられる。今週の自分に当てて、5つに点を付けてみてほしい。
- 仕事を通じて成長できていると感じた頻度
- 任された仕事を進められるという自信を持てた頻度
- この会社での3年先の役割を具体的に言えるか
- 手段や順番を自分で選べた仕事の割合
- 自分と近いキャリアの先輩を1人挙げられるか
点が低く出た項目が、いまの職場で薄くなっているものになる。低いのが成長実感とキャリア展望なら、1on1や面談で話す材料はそこにある(1on1で上司に何を話すか)。裁量度が低いなら、決定の経路のほうを見る。4週間ぶん点を付けてから見返すと、その週だけの落ち込みと、続いている薄さを分けられる。
出典
- 令和元年版 労働経済の分析 第2-(3)-19図 ワーク・エンゲイジメントの高い労働者の主な仕事に対する認識(バックデータ)/厚生労働省/労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(正社員調査票)」2019年の個票を独自集計
- 同 第2-(3)-20図 ワーク・エンゲイジメントの高い者の勤め先企業で実施されている雇用管理(バックデータ)/厚生労働省
- 同 本文 第2部第3章第3節(高い者・低い者の区切りとスコア化の注記)/厚生労働省/2019年9月公表
- 調査シリーズNo.193『人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(企業調査・労働者調査)』/労働政策研究・研修機構/2019年3月実施・正社員調査の有効回収16,752件(回収率16.4%)・企業調査4,599件





