フィードバックは、頼む単位を小さくすると返ってくる確率が上がる。「私の仕事はどうですか」への答えは持ち合わせていない上司でも、「先週出した提案書の構成について、直すなら最初にどこか」なら答えられる。頼み方の工夫の前に、そもそも機会が制度としてあるのか、どこまでを求めとして出せるのかを分けておく。
フィードバックのもらい方を分解する
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育成が仕事の中に埋まっていると、言葉になって出てこない
厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査(事業所調査 有効回答 7,867事業所、2023年10月1日時点)で、若年正社員の育成方法を聞くと「OJT」が69.8%で最も多く、「OFF-JT」35.2%、「自己啓発への支援」33.1%、「ジョブローテーション」24.0%と続く。研修の形をとるものより、日々の仕事の中で教える形が2倍ほど多い。
OJT は仕事に埋め込まれているので、教える側にとっては「いま指摘した」という節目が残りにくい。指示の出し直しや手直しが指導を兼ねていて、評価としての言葉にはならない。だから受け取る側からは何も返ってきていないように見える。ここは構造の話で、上司の姿勢の話とは分けたい。
育成そのものを行っている事業所の割合にも差がある。若年正社員では77.9%、正社員以外の若年労働者では66.3%。契約社員やパートで働いていて指摘が来ないなら、個人の頼み方の前に、育成の対象に入っているかどうかから確かめる必要がある。
求めれば説明義務が生じる範囲がある
待遇については、頼み方の工夫ではなく法律が動く部分がある。パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項で、パートタイム労働者や有期雇用労働者から求めがあったとき、事業主は通常の労働者との待遇の相違の内容と理由、待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明しなければならない。説明の義務。求めがあったときに発生する。
比較の相手は、職務の内容や、職務の内容・配置の変更の範囲が最も近いと事業主が判断する通常の労働者になる。つまり「同じ仕事をしているあの人と自分の何が違うのか」に対して、会社は答える側に立つ。
正社員の場合、評価の理由を説明する一般的な義務はない。就業規則や人事評価規程に開示の定めがあるかどうかで決まるので、そこを先に読む。制度として面談の機会が置かれているかは1on1の実施率で見た通り、勤務先によって差が大きい。
頼む単位は、成果物ひとつと観点ひとつ
抽象度を下げる。これだけで返答の質が変わる。
頼むときに指定するのは、対象の成果物、見てほしい観点、いつまでに欲しいかの3つ。たとえば「昨日の定例で使った資料の3ページ目、数字の見せ方について、今週のうちに5分だけ」。範囲が閉じているので、上司は思い出す作業をしなくていい。
観点は自分で決めて出す。「全体的にどうですか」は、答える側に評価軸の設計まで頼んでいることになる。設計から頼むと「特に問題ないよ」が返る。逆に「構成の順番」「数字の粒度」「想定読者とのずれ」のどれかを名指しすれば、そこだけを見て答えられる。
依頼は文字で送っておく。口頭だけだと、指摘が返ってきたときに何を頼んだのかが双方の記憶勝負になる。3行で足りる。
上司以外から取れるものを数える
指摘の出どころは1人に絞らなくていい。成果物を実際に使う人、隣の案件の担当者、前任者。順番が回ってきた経験のある人ほど、具体的な指摘を持っている。
ただ、誰に何を聞いたかを散らすと材料にならない。観点を同じにして複数の人に投げると、返答の食い違いがそのまま情報になる。3人に「数字の粒度」を聞いて、2人が細かすぎると言い、1人が足りないと言うなら、粒度の合わせ先が人によって違うという事実が取れる。
評価面談で点数の理由が出てこない場合の持ち込み方は、1on1で上司に何を話すかで扱っている。上司との間で噛み合わない原因そのものを切り分けたいなら上司と合わない原因の分け方のほうが近い。
もらったあとに残す5項目
返ってきた指摘は、その場で終わると次の期には消えている。1件につき次の5つを1行で記録する。
- 日付
- 対象にした成果物
- 具体的な指摘の内容(言われた言葉のまま。要約しない)
- 次までに変えると決めたこと
- 次の機会に、それを確認したかどうか
5項目目があると、自分の側の宿題になる。半期で10件貯まれば、指摘が同じ観点に集まっているかどうかが見える。3件が「結論を先に書く」に関わるものなら、直す対象は1つに絞れる。
感情と事実を分けるのは、ここでやるのがいい。言われた瞬間に切り離すのは難しい。記録するときに、言われた言葉と自分がどう感じたかを別の行に書けば、翌週読み返したときに指摘の中身だけを取り出せる。
今週やること
- 就業規則か人事評価規程で、評価結果の開示と面談の定めがあるかを読む。パートや契約社員で働いているなら、待遇の相違について説明を求められることも合わせて確かめる
- 直近1週間で出した成果物を1つ選び、観点を1つ決めて、3行の依頼を文字で送る
- 返ってきた指摘を上の5項目で記録する。1件目から始める
指摘が3件貯まると、自分が繰り返し引っかかっている観点が1つか2つに絞られてくる。そこからが直す作業。





