36協定が決めているのは時間の枠で、残業代の義務はそれとは別の条文から来ている。だから協定があっても残業代は発生し、協定の時間数を超えた残業にも、協定が届け出られていない職場の残業にも、割増賃金の支払義務は残る。協定の有無で変わるのは、会社が労働基準法違反に問われるかどうかのほう。
36協定は、法定労働時間を超えて働かせるために労使で結んで届け出る書面のこと。制度の全体は36協定とは、残業の上限を決める書面に書いた。ここでは協定と賃金が交わる場所を見る。
公開 約 5 分

36協定が決めているのは時間の枠で、残業代の義務はそれとは別の条文から来ている。だから協定があっても残業代は発生し、協定の時間数を超えた残業にも、協定が届け出られていない職場の残業にも、割増賃金の支払義務は残る。協定の有無で変わるのは、会社が労働基準法違反に問われるかどうかのほう。
36協定は、法定労働時間を超えて働かせるために労使で結んで届け出る書面のこと。制度の全体は36協定とは、残業の上限を決める書面に書いた。ここでは協定と賃金が交わる場所を見る。
割増賃金は、時間あたりの賃金に割増率を乗じて計算する。厚生労働省の資料によると、就業形態にかかわらず、パートタイムやアルバイトも含めたすべての労働者に適用される。
率は6通りに分かれる。法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働く時間外労働が25%以上、法定休日に働く休日労働が35%以上、午後10時から午前5時までの深夜労働が25%以上。時間外労働と深夜労働が重なった時間は50%以上になり、1か月60時間を超える時間外労働も50%以上。法定休日労働と深夜労働が重なる時間は、60%以上まで上がる。
どの率にも「以上」が付く。これは下限の数字で、就業規則でこれを上回る率を定めている職場もある。
ここが協定の45時間と近い位置にあって、混ざりやすい。
1か月の時間外労働が60時間を超えた部分の割増賃金率は50%以上。大企業には2010年4月から適用されていて、中小企業には2023年4月1日から適用された。それまで中小企業は60時間を超えても25%でよかったので、明細の作りが2023年4月で変わっている職場がある。
中小企業かどうかは、資本金の額または出資の総額と、常時使用する労働者数のどちらかで判断する。小売業は資本金5,000万円以下または労働者50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、それ以外の業種は3億円以下または300人以下。判断は企業単位で、事業場ごとの人数では見ない。
深夜に重なるとさらに上がる。月60時間を超える時間外労働を深夜の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%に時間外割増賃金率50%を足して75%になる。
厚生労働省のリーフレットに、短く書かれている条件がある。月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれないが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれる。
土日が休みで日曜を法定休日と決めている職場なら、土曜に働いた時間は60時間のカウントに入り、日曜に働いた時間は入らない。月の後半に土曜の出勤が続いた月は、平日の残業だけを数えていたときより早く60時間の線に届くので、同じ総労働時間でも50%が適用される時間数が変わってくる。同じ8時間でも、曜日によって50%に近づくかどうかが変わる。法定休日の労働は35%の側で数える。
どの曜日が法定休日かは就業規則か労働契約に書かれている。ここを確かめないと、自分が60時間のどこにいるのか分からない。
36協定と残業代が同じ紙の上でつながるのは1か所だけ。特別条項を結ぶときに使う様式第9号の2には、限度時間を超えた労働に係る割増賃金率を定める欄がある。
記載例の注記はこう書いている。「限度時間を超えて時間外労働をさせる場合の割増賃金率を定めてください。この場合、法定の割増率(25%)を超える割増率となるよう努めてください」。記載例に入っている数値は35%。
努力を求める書き方なので、25%のままの協定も届け出られている。逆に、協定に35%と書いてあれば、月45時間を超えた時間外労働の明細はその率で計算されるはず。自分の職場の協定届を見て、この欄に何%と書いてあるかを写しておく値打ちはそこにある。
引き上げ分が休暇に替わっていることがある。月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇を付与できる仕組みで、これを代替休暇という。
替えられるのは引き上げ分だけ。25%の部分は賃金として払われる。つまり60時間を超えて働いた月に、明細の割増率が25%のままで有給の休暇が増えているなら、引き上げ分がそちらに回っている可能性がある。導入には労使協定が要るので、就業規則に代替休暇の条文があるかどうかで、自分の職場に制度があるかが分かる。
手順は4つ。
時間あたりの賃金の出し方と、所定労働時間を超えた分と法定労働時間を超えた分の境目は残業時間の計算はどこから始まるかに書いた。法律上の時間外労働と会社の言う残業がずれる理由は実労働時間とは何を数える時間か、毎月同じ額が先に入っている場合の読み方は固定残業代とは、何を見れば分かるかにある。
数字が合わないときの相談先は、労働基準監督署の窓口と、各都道府県の労働局が置いている総合労働相談コーナー。どちらも無料。
割増率は、本人の働き方では動かない条件。同じ10時間の残業でも、25%の職場と35%の職場では受け取る額が違う。60時間を超える月があるかどうかで、もう一段変わる。
明細から取り出すのは3つ。時間外労働の時間数、適用されている割増率、60時間を超えた月の有無。これを4か月ぶん並べると、繁忙期の月だけ率が変わる職場なのか、年間を通して同じ率の職場なのかが見えてくる。
いまの職場を記録する
記録する