マーケティングの残業時間、規模で2倍差

市場調査や商品企画を担当する人の残業は、月11時間だった。令和7年賃金構造基本統計調査で「企画事務員」として集計された一般労働者492,930人の超過実労働時間数で、2025年6月の1か月ぶん、企業規模10人以上の値。平均年齢43.0歳、平均勤続年数14.4年の集団。

同じ区分を企業規模で割ると、1,000人以上の企業で12時間、10〜99人の企業で6時間。2倍の開きがある。

調査に「マーケティング」という職種は無い

賃金構造基本統計調査の職種は日本標準職業分類にそろえてあり、その小分類にマーケティングという名前の枠は置かれていない。マーケティング・リサーチャーが内容例示として挙げられているのは、小分類253「企画事務員」。説明は「企画・立案、業務計画の策定及び市場調査などの仕事に従事するもの」で、例示には企画係事務員、プランナー、業務計画係事務員、商品開発部員も並ぶ。

つまり市場調査や商品企画を担当している人は、この区分で数えられている可能性が高い。ただし分類を決めるのは事業所で、調査票にどの職種を書いたかで行が変わる。広告の出稿や販促の実務が中心なら、営業・販売事務従事者やその他の営業職業従事者に入っていることもある。

近い4区分を、超過実労働時間数とあわせて並べる。

職種(小分類) 超過実労働時間 所定内実労働時間 労働者数
企画事務員 11時間 158時間 492,930人
営業・販売事務従事者 10時間 158時間 931,000人
その他の営業職業従事者 10時間 163時間 907,410人
総合事務員 9時間 157時間 1,277,030人

9時間から11時間。どの行を自分の仕事に当てても、月2時間ぶんしか動かない。転職サイトで見かける「マーケティングは月30時間」という水準とは3倍ちがうので、どちらの数字が何を数えたものかを分けて扱う必要がある。この調査の超過実労働時間数は、事業所が給与計算に使った時間を調査票に書いたもの。

企業規模で、12時間と6時間に分かれる

企業規模 超過実労働時間 所定内実労働時間 平均勤続年数 労働者数
1,000人以上 12時間 157時間 17.1年 264,950人
100〜999人 11時間 160時間 12.2年 155,680人
10〜99人 6時間 160時間 9.2年 72,300人
計(10人以上) 11時間 158時間 14.4年 492,930人

残業が長いのは大きい企業のほう。1,000人以上で12時間、10〜99人で6時間。上位記事では「大手は業務が細分化されているので残業が少なく、中小は人員が少ないので多い」という説明をよく見かけるが、この調査の企画事務員の行はその向きと逆になっている。

企画事務員の労働者数も規模で偏る。1,000人以上の企業に264,950人、全体492,930人の半分以上が集まっていて、10〜99人の企業は72,300人で15%ほど。企画や市場調査を専任で置ける規模とそうでない規模の差が、人数の分布に出ている。

勤続年数の差も大きい。1,000人以上で17.1年、10〜99人で9.2年。差は7.9年ある。残業が長い側のほうが長く勤めている人が多い、という並びになっている。

所定内を足すと、差は3時間に縮む

超過の欄だけを見ると、働いている時間の合計を取り違える。所定内実労働時間と超過実労働時間を足すと、1,000人以上が157+12で169時間、100〜999人が160+11で171時間、10〜99人が160+6で166時間。

残業の欄で12時間と6時間、つまり2倍あった差は、合計では169時間と166時間の3時間差。所定内の時間が規模の小さい側で3時間長いぶん、超過の差が打ち消されている。残業が短い職場が、働いている時間の合計まで短いとは限らない。

全産業の平均と比べたいなら別の調査になる。毎月勤労統計調査で見た残業時間の平均は月9.8時間、同じ調査の企業規模別の残業時間は9〜13時間で、調査も対象も違うので同じ表の数字としては並べられない。

この表から言えないこと

職種の分類は、名刺の肩書きで決まらない。実際に従事している仕事の内容で分類されるので、同じ「マーケティング担当」でも、調査票を書いた事業所がどの職種を選んだかで入る行が変わる。自分がどの区分に数えられているかは、自分では確かめられない。

申請されていない時間はこの数字に入らない。裁量労働制やみなし労働時間制が適用されている人の時間は、制度上のみなし時間で計上される場合がある。固定残業代が設定されている職場では、支給額と実際の超過時間の対応が見えにくいので、固定残業代とは、何を見れば分かるかに読み方を書いた。

産業別の内訳も、企画事務員の行には無い。広告業で働く企画事務員と、製造業の商品企画部門にいる企画事務員は、同じ行に合算されている。業種で割った数値は業種別の残業時間、最長20.6時間にある。

6月の1か月ぶんという点も読み方に関わる。繁忙期が期末や年度初めに寄る仕事なら、6月の値はその職種の年間の山を含んでいない。

自分の月の時間と並べる

11時間という数字は、自分の残業が多いか少ないかを決めるものではない。使えるのは、自分の職場の規模に対応する行と自分の月の超過時間を並べて、差が何時間あるかを出すところまで。従業員1,000人以上の会社で月35時間なら、同じ列の12時間との差は23時間。

所定内の時間も一緒に見ておきたい。就業規則の所定労働時間と、勤怠に残っている時間の差は、超過の欄とは別の数字。2つを4週ぶん記録すると、自分の職場の時間の構造が、繁忙期の記憶とは別に残る。

出典

  1. 令和7年賃金構造基本統計調査(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額等(産業計)/厚生労働省/2025年6月分・一般労働者・企業規模10人以上(企画事務員492,930人)
  2. 日本標準職業分類 小分類253 企画事務員(分類項目名、説明及び内容例示)/総務省・政府統計の総合窓口
  3. 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(統計表の一覧)/厚生労働省・政府統計の総合窓口
  4. 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(調査の概要)/厚生労働省