残業代の平均としていちばん使われているのは、毎月勤労統計調査の「所定外給与」である。2025年(令和7年)分の確報では、事業所規模5人以上の就業形態計で月19,895円、パートタイム労働者を除いた一般労働者で月27,477円(厚生労働省、2026年2月25日公表)。この額には休日出勤手当や深夜手当も入っていて、しかも1か月まったく残業しなかった人も分母に数えられている。
残業代の平均は月19,895円
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所定外給与は、時間外手当より範囲が広い
調査の定義はこうなっている。所定の労働時間を超える労働に対して支給される給与や、休日労働、深夜労働に対して支給される給与。時間外手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、深夜手当などが入る。
つまり、休日に出た手当も早朝に出た手当も同じ箱に入っている。平日の残業だけを取り出した平均は、この調査からは出てこない。休日出勤が月に2回ある職場の人と、残業は平日に少しだけという人が、同じ「所定外給与」という1つの欄に合算されて平均が作られているため、自分の時間外手当だけを19,895円と並べても、比べている中身が一致しない。
2025年の額は、就業形態と規模で変わる
| 区分 | 所定外給与 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|
| 就業形態計(規模5人以上) | 19,895円 | 9.8時間 |
| 一般労働者(規模5人以上) | 27,477円 | 13.2時間 |
| パートタイム労働者(規模5人以上) | 3,251円 | 2.3時間 |
| 就業形態計(規模30人以上) | 25,076円 | 11.5時間 |
| 一般労働者(規模30人以上) | 32,112円 | 14.4時間 |
前年からの動きは小さい。就業形態計の所定外給与は1.3%増で、所定外労働時間は2.5%減。時間が減って額が増えたぶんは、単価の上昇にあたる。前年の令和6年分確報では所定外給与19,634円・所定外労働時間10.0時間だったので、1年で額は261円増え、時間は0.2時間短くなった。261円。
30人以上の事業所に限ると、一般労働者で32,112円。5人以上で見た27,477円との差は4,635円。小さい事業所を含めるほど平均は下がる。
分母には、残業ゼロの人も入っている
この19,895円は、常用労働者1人あたりの平均。残業が1分もなかった人も、パートタイムの人も、同じ分母に入る。平均が低く見えるのは、ここが効いているため。パートタイム労働者比率が3割を超えている集計のなかで、残業代が月3,251円の層と月27,477円の層をまとめて1つの平均にしているので、就業形態計の数字はどちらの実感からも離れた位置に落ちる。
自分の額と比べるなら、就業形態・事業所規模・産業をそろえた行を見る。月給制でフルタイムなら、まず一般労働者の27,477円が比べる相手になる。
1時間あたりに割り戻すと、2,000円台
同じ調査の第1表と第2表を使うと、1時間あたりの単価が出る。一般労働者の所定外給与27,477円を所定外労働時間13.2時間で割ると、約2,081円。割増率25%を含んだ額なので、1.25で割り戻した基礎賃金は約1,665円。どちらも筆者の計算値で、調査が公表している数字ではない。
就業形態計なら19,895円÷9.8時間で約2,030円。一般労働者と近い。残業1時間の重みは、就業形態が違ってもそれほど離れていない。
産業で6倍の開きがある
一般労働者の所定外給与を、産業別に並べる。
| 産業 | 所定外給与 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|
| 電気・ガス業 | 62,629円 | 16.9時間 |
| 運輸業、郵便業 | 49,547円 | 24.1時間 |
| 情報通信業 | 35,922円 | 16.5時間 |
| 製造業 | 35,346円 | 14.7時間 |
| 卸売業、小売業 | 21,062円 | 11.3時間 |
| 医療、福祉 | 19,718円 | 6.7時間 |
| 教育、学習支援業 | 9,951円 | 14.8時間 |
いちばん高い電気・ガス業の62,629円と、いちばん低い教育、学習支援業の9,951円で6.3倍。注目したいのは、この2つの産業で所定外労働時間が16.9時間と14.8時間、2.1時間しか違わないこと。時間が近いのに額が6倍離れる。
教育、学習支援業の9,951円を14.8時間で割ると約672円。製造業は35,346円を14.7時間で割って約2,405円。同じ1時間の残業に対して支払われている額が、産業によってここまで動く。基礎賃金の水準の差と、残業の記録のされ方の差が、どちらも混ざった結果として出ている数字である。
この平均で言えないこと
- 分布が出ない。公表されているのは平均値だけで、中央値や何割の人が何円という形の数字はない
- 支払われた給与の集計なので、記録に上がっていない残業は入らない
- 事業所規模5人以上の調査。4人以下の事業所は対象外
- 産業別の額は、残業の単価と残業の時間数と就業形態の構成が混ざったもの。どれが効いているかはこの表から分けられない
自分の額を置いてみる
- 明細の時間外手当・休日手当・深夜手当を合計する。所定外給与と同じ範囲にそろえる
- 自分の残業時間で割って、1時間あたりの額を出す
- 上の表で、自分の産業と事業所規模の行と比べる
時間のほうの平均は残業時間の平均、産業ごとの時間は残業時間の業種別に同じ調査から並べた。1時間あたりの額が表より低く出るなら、基礎賃金の出し方か、割増率の当て方のどちらかを残業時間の計算の手順で確かめる。定額で払われている職場は、そもそも時間に連動しないので固定残業代とはのほう。





