残業代の計算は、3つの掛け算

残業代は3つの掛け算で出る。1時間あたりの賃金額、割増率、残業した時間数(労働基準法37条)。明細の金額が自分の計算と合わないとき、ずれている項はたいてい1つ目で、基礎に入れるべき手当が抜けているか、割る側の時間数が違っている。時間の数え方そのものは残業時間の計算に分けた。

式は1つだけ。中身が形態で変わる

1時間あたりの賃金額 × 割増率 × 時間数。この並びは、時間外労働でも休日労働でも深夜労働でも変わらない。変わるのは、1時間あたりの賃金額をどう出すかと、どの割増率を当てるか。

月給制は、1か月の平均所定労働時間で割る

月給を単純に30で割っても、1日の所定労働時間で割っても、1時間あたりの賃金額にはならない。手順は2段。

  1. 1年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12 = 1か月の平均所定労働時間
  2. 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間 = 1時間あたりの賃金額

厚生労働省神奈川労働局の例では、年間休日が125日で1日の所定労働時間が8時間、月給24万円の人を置く。(365−125)×8÷12で160時間、240,000÷160で1,500円。これに割増率を掛けた額が、1時間の残業に対して支払われる。

年間休日が10日少ない職場なら、同じ月給でも分母が大きくなるので、1時間あたりの額は下がる。就業規則の年間休日数を見ずに残業代を検算すると、ここで合わなくなる。

基礎から外せる手当は7つだけ

分子に当たる「月給」は基本給だけではない。各種手当も入る。外せるのは次の7つに限られていて、制限的な列挙とされている。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

役職手当、資格手当、精皆勤手当、営業手当。この並びはどれも7つに入らないので、基礎に算入しなければならない。

名前が同じでも扱いが分かれる場合がある。扶養家族の人数や実際の通勤費、家賃の額に関係なく一律で支給される手当は、名称が家族手当や住宅手当でも算定基礎に入る。厚生労働省愛知労働局の資料は住宅手当の線引きを具体で示していて、家賃に一定割合を掛けて支給するものは除外できる一方、賃貸の人に2万円・持家の人に1万円と形態ごとに定額で払うものは除外にあたらない。手当の名称ではなく、支給の実質で決まる。

明細に出ている手当のうち、この7つに当てはまらないものを足した額が分子。足し忘れが、金額のずれでいちばん多い。

時給・日給・歩合は、分母が違う

賃金の形態 1時間あたりの賃金額
時間によって定められた賃金 その時間額
日によって定められた賃金 日額 ÷ 1日の所定労働時間数
月によって定められた賃金 月額 ÷ 1か月の平均所定労働時間数
出来高払制その他の請負制 賃金計算期間の賃金総額 ÷ その期間の総労働時間数

月給と日給を併せて受けている人は、それぞれで出した額を合計する。歩合の部分がある人は、総労働時間数で割るため、働いた時間が増えると1時間あたりの額そのものが下がっていく。

率は重なると足し算になる

種類 条件 割増率
時間外労働 法定時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき 2割5分以上
月60時間を超える時間外労働 1か月の時間外労働が60時間を超えた部分 5割以上
休日労働 法定休日(週1日)に働かせたとき 3割5分以上
深夜労働 22時から5時までの間に働かせたとき 2割5分以上

月60時間超の5割は、中小企業にも2023年4月1日から適用されている。それ以前の明細と率が違うのは、この日付のため。

重なった場合は率を足す。時間外労働が深夜に及べば合計5割以上、法定休日の労働が深夜に及べば合計6割以上。神奈川労働局の例では、1時間あたり1,500円の人が13時から23時まで(うち休憩1時間)働いた場合、22時から23時までの1時間は時間外かつ深夜なので、1,500×1.5で2,250円になる。

同じ1時間でも、18時台なら1,875円、22時台なら2,250円。遅い時間に残った月だけ単価が合わなくなるのは、この加算を見落としているから。なお、月60時間を超えた時間外労働が深夜に及ぶと、5割と2割5分で7割5分以上。

請求できる期間は、当分の間3年

2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金の請求権は、消滅時効期間が5年に延長され、当分の間は3年とされている(労働基準法115条)。割増賃金が支払われなかった場合の付加金を請求できる期間も、同じく当分の間3年。旧法の2年から伸びた。

さかのぼって検算するなら、3年ぶんの明細と勤怠記録が手元にあるかどうかが先に来る。

明細を自分で検算する3点

  • 就業規則の年間休日数と1日の所定労働時間。これがないと分母が出ない
  • 明細の手当欄。7つに当てはまらない手当が、基礎に足されているか
  • 残業した時刻。22時をまたいだ時間数が、別建てで計算されているか

この3つを置いてから、残業時間の計算の手順で時間数を出し、掛け合わせる。固定残業代の職場は単価の出し方が別なので固定残業代とは、そもそも残業させるための手続きは36協定と残業代のほう。自分の残業時間が周りと比べてどのあたりかは残業時間の平均に統計を並べた。

出典

  1. 割増賃金の計算方法(厚生労働省 神奈川労働局 川崎北労働基準監督署)/割増率の一覧、1時間あたりの賃金額の算出例、除外できる7つの手当、深夜と重なった場合の計算
  2. 割増賃金について(厚生労働省 兵庫労働局)/時間外と深夜、法定休日と深夜が重なった場合の率、1か月の平均所定労働時間の求め方
  3. 割増賃金の基礎となる賃金について(厚生労働省 愛知労働局)/除外できる7種の制限列挙、住宅手当を実質で判断する範囲と具体例
  4. 未払賃金が請求できる期間などが延長されています(厚生労働省、2020年4月1日施行の労働基準法改正)/賃金請求権の消滅時効5年・当分の間3年、付加金の請求期間