有給休暇は、申請して初めて生まれる権利ではない。雇入れの日から6か月続けて働き、全労働日の8割以上出勤していれば、その時点で10労働日ぶんが発生している。労働基準法39条が定める年次有給休暇のことで、使用者の承認は要らない。賃金が支払われたまま労働義務を免れる日、と言い換えてもいい。
有給休暇とは、申請前からある権利
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法律が決めているのは、発生の仕方と日数
厚生労働省は制度の趣旨を、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、またゆとりある生活の実現にも資するもの、と説明している(2021年4月の労働政策審議会資料)。法定休日とは別枠で、毎年一定の日数を与える。
権利の性格については、1973年(昭和48年)3月2日の白石営林署事件判決が、客観的な要件を満たすことによって法律上当然に発生する権利であり、労働者が請求してはじめて生ずるものではない、と示している。申請書は、すでにある権利をいつ使うかを伝える手続きにすぎない。
会社が独自に設けている夏季休暇や慶弔休暇は、名前に「休暇」が付いていても年次有給休暇ではない。就業規則で法定の日数に上乗せしているぶんも、法律の枠の外。残日数を数えるときは、どちらの枠の休みなのかを先に分ける。
雇用形態で切られない
パート、アルバイト、契約社員、管理監督者。要件を満たせば、どの立場でも発生する。
日数のほうは所定労働日数で変わる。週の所定労働日数が4日以下で、1年間の所定労働日数が216日以下の人は、比例付与という仕組みで決まる。週4日なら勤続6か月で7日、3年6か月で10日、6年6か月以上で15日。週3日は5日から11日、週2日は3日から7日、週1日は1日から3日の範囲におさまる(労働基準法施行規則24条の3)。週3日勤務で勤続6年6か月の人も、週5日勤務で勤続1年6か月の人も、どちらも11日という具合に、働く日数と勤続年数の組み合わせが違っても同じ日数になることがあるので、同僚の残日数から自分の日数を推し量ることはできない。比べる相手は去年の自分。
6か月で10日、6年6か月で20日
勤続年数ごとの法定の付与日数は、こう決まっている。
| 継続勤務年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
2年6か月までは1年ごとに1日、3年6か月からは1年ごとに2日ずつ増え、20日で止まる。使わなかったぶんは翌年に繰り越せるものの、発生日から2年で時効にかかる(労働基準法115条)。繰越と合わせて手元に置ける上限は40日。就業規則で繰越を禁じても、それだけで年休権が消えることはない、と厚生労働省の解説は書いている。
8割以上の出勤という要件には、出勤したものとして数える日がある。業務上のけがや病気で療養していた期間、産前産後の休業期間、育児休業と介護休業の期間、それに年次有給休暇を取った日。使用者が正当な理由なく就労を拒んだために働けなかった日も、出勤日数に算入される。
日を決めるのは本人、ずらせるのは会社
条文は「労働者の請求する時季に与えなければならない」と書いている(39条5項)。日付も、分割するか連続させるかも、原則として本人が決める。
例外が時季変更権。その日に休ませると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は別の時季に変えられる。判断は請求した人の所属する事業場を基準に、個別具体的に行われる。代替勤務者を配置できるのに配慮しないまま変更権を使うことは許されない、とした判例もある(弘前電報電話局事件)。忙しいという一言だけでは、根拠として足りない。
条文が本人に求めているのは時季の指定で、理由の申告は要件に入っていない。
年5日は、会社の側の義務
2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、使用者が5日ぶんの時季を指定して取得させることが義務になった(39条7項)。管理監督者も対象。本人が自分で取ったぶんや計画年休で5日に達していれば、この義務は消える。違反には30万円以下の罰金が定められている。
時季を指定するとき、使用者は本人の意見を聴かなければならない(労働基準法施行規則24条の6)。聴いた意見を尊重する努力義務もある。会社から休む日を決められたのに意見を聞かれていないなら、そこは手続きが一段抜けている。
1日単位が原則で、半日と時間単位は例外
原則は1日単位。半日単位は、本人が希望して時季を指定し、使用者が同意した場合に、1日単位での取得を妨げない範囲で認められる。時間単位は労使協定の定めが必要で、年に5日が限度になる。
ただし時間単位で取ったぶんは、年5日の取得義務を満たしたかどうかの計算には入れられない。1時間ずつ5日ぶん積み上げても、義務のほうは消えない。
取れた日数は、3つの数字で測る
有給の取得状況を測る指標は3つある。付与日数、取得日数、そして取得日数を付与日数で割った取得率。厚生労働省の就労条件総合調査が毎年集計していて、繰越日数は付与日数に含めない決まりになっている。
2025年の調査(令和6年1年間の実績、有効回答3,820社)では、労働者1人平均の付与日数が18.1日、取得日数が12.1日、取得率が66.9%だった。この平均が何を測った値なのかは有給取得率の平均は66.9%に、41年ぶんの動きは有給取得率の推移、6年で14.5ポイントに書いた。業種で24.5ポイント開くことも分かっている(有給取得率、業種別で24.5ポイント差)。
自分の職場で確かめる
制度は全国で同じでも、運用は職場ごとに違う。本人の側で数えられるのは、次の4つ。
- 申請から返答までの日数
- 直前(前日・当日)の申請が通った回数と、通らなかった回数
- 繰り越した日数のうち、時効で消えた日数
- 年5日の時季指定を会社から受けたかどうか
最初の2つは、記録しておかないと年末に思い出せない。申請した日と結果を1行ずつ残せば、取れた日数ではなく取りにくさの側を、来年の同じ時期に数字で言える。何から確かめるかの順番は有給が取りづらいとき、何から動くかに整理した。
出典
- 年次有給休暇制度について(2021年4月1日 資料2-1。制度の趣旨・付与の要件・勤続年数別の付与日数・取得単位・時季指定)/厚生労働省
- 年次有給休暇(しっかり学ぼう!働くときの基礎知識)/厚生労働省「確かめよう労働条件」/付与の要件、出勤率の算定、時季変更権、年5日の時季指定義務、年休権の消滅
- 労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱 別添2(第24条の3 所定労働日数が少ない労働者への比例付与の日数表)/厚生労働省 2000年11月30日発表
- 年次有給休暇取得促進特設サイト(年5日の時季指定義務の数え方。時間単位年休は5日に含めない)/厚生労働省
- 令和7年就労条件総合調査 結果の概況(第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況)/厚生労働省/令和6年1年間の実績・調査客体6,448社・有効回答3,820社





