定着率の平均は86.3%、1年あたり

1年あたりの定着率の平均は86.3%。厚生労働省の令和7年雇用動向調査で離職率が13.7%だったので、100から引くとこの値になる。同じ年の入職率は14.7%で、出ていった人より入ってきた人のほうが1.0ポイントぶん多かった。ただし86.3%は全産業・全就業形態をならした数字で、内訳を開くと8ポイント以上の幅が出てくる。

平均は上がった。前の年より0.5ポイント

年 入職率 離職率 100から引いた定着率
令和6年(2024年) 14.8% 14.2% 85.8%
令和7年(2025年) 14.7% 13.7% 86.3%

離職率は0.5ポイント下がり、入職率は0.1ポイントの低下にとどまった。出ていく側だけが減ったので、入職超過率は0.4ポイント広がって1.0ポイントになっている。定着率だけを見れば上がったと読めるものの、腰を落ち着けた人が増えたのか、動ける先が減って動かなかっただけなのかは、入職率と離職率の2つを並べただけでは決められない。ここは分けられないところ。

一般労働者88.6%、パートタイム80.1%

就業形態で分けると、平均の86.3%はふたつに割れる。

就業形態 入職率 離職率 100から引いた定着率
一般労働者 12.0% 11.4% 88.6%
パートタイム労働者 21.7% 19.9% 80.1%

8.5ポイントの差。産業を絞るとさらに開く。教育・学習支援業では一般労働者の離職率が9.8%で定着率にすると90.2%、パートタイム労働者は離職率26.6%で定着率73.4%となり、同じ産業のなかでも就業形態が違うだけで16.8ポイントの開きが出る。宿泊業・飲食サービス業の一般労働者は21.5%。定着率にすると78.5%で、こちらは一般労働者のなかでいちばん低い。

平均の86.3%に近い職場を探すより、自分がいま一般労働者なのかパートタイム労働者なのか、勤め先の事業所がどの産業に数えられているのか、その組み合わせがどこに来るかを見たほうが早い。16産業ぶんの値は産業別の定着率に並べてある。

上半期の8.1%は、年計で13.7%になった

この調査は1月から6月と7月から12月の2回に分けて実施され、2回ぶんを合算したものが年計として公表される。令和7年(2025年)上半期の離職率は8.1%だった。入職率は8.9%。入職者457万9,700人に対して離職者413万4,200人で、差は44万5,500人。就業形態で分けると、一般労働者が入職7.6%・離職6.5%、パートタイム労働者が入職12.4%・離職12.0%。

上半期の8.1%を2倍しても、年計の13.7%にはならない。半期の値は、1月から6月までに離職した人の数を1月1日現在の常用労働者数で割ったもの。分母は年計とそろっている。縮んでいるのは分子のほうで、下半期に職場を離れた人が上半期より少なかったぶん、2回を合算した年計は単純な倍の16.2%ではなく13.7%に収まった。半期の数字から年計を当てにいっても、この差は埋まらない。

定着率の式は1つに決まっていない

定着率という語に、統計上の定義は置かれていない。解説でよく使われるのは、期間の始めにいた人のうち、終わりまで残っていた人の割合を出す式だ。4月に入った10人が3年後に7人なら70%。入った人を名簿で追いかける数え方になる。

このページの86.3%は、そこと違う。離職率13.7%を100から引いた値で、分母は1月1日時点の常用労働者数。1年のあいだに入ってきた人も、途中で出ていった人も、事業所という枠のなかでまとめて数えられている。名簿を追いかけてはいない。

離職率との関係も、ここで決まる。同じ母集団を裏返しただけなので、86.3%と13.7%は足して100になる。ただし、入った人がどれだけ残ったかを知りたいときに使えるのは前の式のほうで、いま職場から人がどの速さで抜けているかを見たいときは後ろの値。どちらも定着率と呼ばれている。数字が近くても、数えたものがそろっているとは限らない。

数えているのは事業所への出入り

調査対象は主要産業で常用労働者5人以上を雇う事業所から無作為に抽出した約1万5,000事業所である。全数調査ではない。5人未満の事業所は、そもそも枠に入っていない。

率の分母は1月1日現在の常用労働者数で、分子はその年に入った人・出た人の数になる。だから離職率13.7%は「100人いた職場から13.7人が出た」という読み方をする。

離職の理由は、この率のなかで分けられていない。転職も、定年も、契約期間の満了も、体調によるものも、家庭の事情によるものも、率のうえでは同じ1件として数えられているので、13.7%という数字から辞めた人の事情を読み取ることはできない。事情のほうを聞いている調査は別にあり、転職理由ランキングにまとめた。定着率が高い職場は、辞めなかった人が多い職場。それ以上の意味は乗っていない。

1年の86.3%を3年に伸ばすと

毎年86.3%の人が残ると仮定して3乗すると、3年後に残っているのは64.3%になる。参考までに、大学を出て就職した人の3年以内離職率は33.8%なので、定着率は66.2%。近い値が出る。

ただし単純な累乗には「どの年も同じ確率で辞める」という仮定が要る。入って1年目と5年目で辞める確率が違えば、この計算は外れる。ここは推定であって、公表値ではない。学校を出たばかりの人に限った集計との比較は、規模別の定着率のほうが単位をそろえて読める。

平均と自分の職場の距離

86.3%は全国の事業所をならした値で、自分がいる職場の値ではない。産業と就業形態で切るだけでも73.4%から90.2%まで動く以上、平均との差を測ってもあまり意味がない。

代わりに、手元で数えられるものが3つある。この1年で同じ部署から何人が抜けたか。抜けた人の勤続年数はそれぞれ何年だったか。後任が来るまでに何か月かかったか。分母が小さいぶん、全国平均より自分の職場の状態をよく映す。

4週ぶん書き留めると、次の面談で使える材料になる。

出典

  1. 令和7年 雇用動向調査結果の概況/厚生労働省/2025年(年計)・常用労働者5人以上の事業所から層化無作為抽出した約1万5,000事業所(調査対象14,840事業所、有効回答は上半期9,277・下半期8,807事業所)/2026年8月31日公表
  2. 同 概況全体版(表1 常用労働者の動き/表4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率/調査の概要)
  3. 令和7年上半期 雇用動向調査結果の概要/厚生労働省/2025年1〜6月
  4. 雇用動向調査の調査設計(対象・抽出・実施時期)/労働政策研究・研修機構 労働統計所在案内
  5. 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)/厚生労働省/2025年10月24日公表