2022年3月に大学を出て就職した人のうち、3年たっても最初の勤め先にいた割合は、従業員1,000人以上の事業所で73.0%、5人未満の事業所で42.5%だった。差は30.5ポイント。厚生労働省が2025年10月24日に公表した就職後3年以内離職率(それぞれ27.0%と57.5%)を、100から引いた値である。
規模別の定着率は42%から73%
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公表されているのは離職率のほうで、定着率はその裏側
厚生労働省が出しているのは離職率で、定着率という指標は集計されていない。100から引けば出るので、以下は両方を並べる。
| 事業所規模 | 大学卒 離職率 | 大学卒 定着率 | 高校卒 離職率 | 高校卒 定着率 |
|---|---|---|---|---|
| 5人未満 | 57.5% | 42.5% | 63.2% | 36.8% |
| 5〜29人 | 52.0% | 48.0% | 54.6% | 45.4% |
| 30〜99人 | 41.9% | 58.1% | 45.2% | 54.8% |
| 100〜499人 | 33.9% | 66.1% | 36.7% | 63.3% |
| 500〜999人 | 31.5% | 68.5% | 29.9% | 70.1% |
| 1,000人以上 | 27.0% | 73.0% | 26.3% | 73.7% |
規模が1つ上がるごとに定着率も上がる。全体の3年以内離職率は大学卒が33.8%で前年より1.1ポイント低下し、高校卒は37.9%で0.5ポイント低下した。中学卒は54.1%で、こちらは3.6ポイント上がっている。
式は単純で、どの期間の誰を分母に置いたかで値が変わる
定着率は、起点にいた人のうち何人が期間の終わりにも残っていたかの割合である。残っていた人数 ÷ 起点にいた人数 × 100。離職率は分母が同じで、分子だけが離職した人数に入れ替わる。だから2つを足すと100になる。成り立つのは、分母と期間を揃えたときだけ。
上の表でいうと、起点は2022年3月に学校を出て就職した人で、終点は3年後。厚生労働省が分母に置いたのは令和4年3月1日から6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した人、分子に置いたのは令和7年3月31日までに離職した人である。1,000人以上の事業所の27.0%は、この分母に対する割合。
期間を1年に取れば、同じ職場でも別の値が出る。在籍している人全体を分母にすれば、また別の値。求人票や会社説明で見た「定着率◯%」を上の表の隣に置く前に、確かめることが3つある。誰を数えた分母か、何年ぶんか、離職の理由を問うているか。3つめは、この資料では問われていない。
1年あたりの全産業の値は定着率の平均に、業種ごとの差は業種別の定着率に置いた。どちらも分母と期間がこの表と違うので、数字だけを横に並べても比べたことにならない。
500〜999人の区分だけ、高卒と大卒が入れ替わる
6つの規模区分のうち5つでは高校卒の離職率が大学卒を上回るのに、500〜999人の区分では高校卒29.9%、大学卒31.5%と逆になる。1.6ポイントの逆転。理由をこの資料から取り出すことはできないので、ここは事実として置いておく。
区分は「事業所」の規模で、会社の規模ではない
ここがいちばん誤解されやすい。数えているのは、雇用保険に加入した事業所の従業員数である。全社で1万人いる会社でも、配属されたのが20人の営業所なら、その人は5〜29人の区分に入る。だから、この表を会社選びの基準として企業規模に読み替えると、実際に配属される場所とはずれる。企業のほうで切った離職率は企業規模別の離職率にあり、区分の作りが違う。
雇用保険の記録から作られた数字
標本調査ではない。令和4年3月1日から6月30日までに新規学卒として雇用保険に加入した人を分母に置き、令和7年3月31日までに離職した人を分子に置いて計算している。
離職の理由は問われていない。転職も、大学院への進学も、独立も、家庭の事情も、体調によるものも、全部が同じ1件として数えられる。雇用保険の記録は、その人が最初の勤め先を離れた日付までは持っているものの、次にどこへ行ったのか、そもそも働いているのかまでは追いかけていないので、57.5%の中身を分けることはできない。
この30.5ポイントで言えないこと
学歴は生年月日から推定されている。大学卒とみなされるのは平成12年4月1日以前に生まれた人で、実際の卒業学校を1件ずつ確認したものではない。雇用保険に加入しない働き方で就職した人も、最初から入っていない。
3年より先も分からない。同じ資料には産業別の集計もあって、離職率の高い産業と小さい事業所は重なりやすいので、規模の差だと見えているものには産業構成の違いが混ざっている。
対象は2022年3月に就職した人たち。今年入った人に同じ数字が出るとは限らない。
そして、3年いたこと自体が本人にとって何だったのかを、この表は何も語らない。定着率が高い区分は、辞めなかった人が多い区分というだけである。
自分のいる職場は、規模より小さい単位で測る
73.0%も42.5%も入社時点の集計であって、いま自分がいる職場の値ではない。手元で数えられるのは、もっと近いところ。この1年で同じ部署から何人が辞めたか、その人たちの勤続年数は何年だったか、後任が来るまでに何か月かかったか。
3つとも、事業所の規模とは別に動く。規模だけでは足りない。書き留めておくと、次に異動の希望を出すとき、規模の話ではない材料で説明できる。





