宿泊業・飲食サービス業に就職した人のうち、3年以内に辞めた割合は高校卒で64.7%、大学卒で55.4%。全体の値が高校卒37.9%、大学卒33.8%なので、この産業だけ20ポイント以上うえに出ている。厚生労働省が2025年10月24日に公表した、2022年3月卒業者の離職状況である。雇用保険の被保険者記録をもとに集計されたもので、標本調査ではない。
早期離職の業種別、高卒64.7%
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上位5産業は、高校卒と大学卒で顔ぶれも順番も同じ
| 産業 | 高校卒 | 大学卒 | 差 |
|---|---|---|---|
| 宿泊業,飲食サービス業 | 64.7% | 55.4% | 9.3ポイント |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 61.5% | 54.7% | 6.8ポイント |
| 教育、学習支援業 | 53.6% | 44.2% | 9.4ポイント |
| 医療、福祉 | 49.2% | 40.8% | 8.4ポイント |
| 小売業 | 48.3% | 40.4% | 7.9ポイント |
| 全体 | 37.9% | 33.8% | 4.1ポイント |
5つとも、並び順まで一致している。学歴が変われば任される仕事の中身も、入る事業所の大きさも変わるはずなのに、3年以内に辞めた人の割合が高い産業の並びのほうは、高校卒でも大学卒でも同じ形をしていた。
学歴の差は、この5産業で全体の2倍近くに開く
全体で見た高校卒と大学卒の差は4.1ポイントだが、上位5産業では、いちばん狭い生活関連サービス業・娯楽業でも6.8ポイント、いちばん広い教育・学習支援業では9.4ポイントまで開く。
離職率の高い産業ほど、学歴による差も大きい。全体の4.1ポイントという差のほうは、離職率の低い産業がたくさん含まれることで縮んでいる値なので、同じ産業のなかで高校卒と大学卒を並べると、差はもっと開く。
なぜ開くのかまでは、この集計から出てこない。任される仕事の違い、初任給の違い、同期の人数の違いと、候補はいくつも立つけれど、どれもこの資料の中では検証されていない。仮説の段階。辞めた本人が挙げた理由の分布は転職理由ランキングに、入社前に聞いていた条件と入社後の実態がどこでずれるかは入社後のギャップは何が原因かに置いた。
前年から上がったのは、生活関連サービス業・娯楽業だけ
前年の集計との差も公表されている。宿泊業・飲食サービス業は高校卒で0.4ポイント、大学卒で1.2ポイント下がり、医療・福祉は0.1ポイントと0.7ポイント、小売業は0.3ポイントと1.5ポイント、この3産業はどちらの学歴でも下を向いた。
上がったのは生活関連サービス業・娯楽業で、高校卒0.5ポイント、大学卒1.0ポイント。
教育・学習支援業だけ、向きが学歴で分かれた。高校卒は0.5ポイント上がり、大学卒は2.4ポイント下がっている。5産業10通りの動きのうち、最も大きく動いたのがこの大学卒の2.4ポイント。
17産業まで広げると、上と下で50ポイント開く
報道発表資料の本体に並んでいるのは上位5産業だけだが、同じ資料の別紙2と別紙3に、産業別のグラフとして17産業ぶんの値が載っている。高校卒の高い順に並べ直す。
| 産業 | 高校卒 | 大学卒 |
|---|---|---|
| 宿泊業,飲食サービス業 | 64.7% | 55.4% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 61.5% | 54.7% |
| 教育、学習支援業 | 53.6% | 44.2% |
| 医療、福祉 | 49.2% | 40.8% |
| 小売業 | 48.3% | 40.4% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 43.1% | 36.5% |
| 建設業 | 41.4% | 30.5% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 40.1% | 38.8% |
| 卸売業 | 39.8% | 30.0% |
| 調査産業計 | 37.9% | 33.8% |
| 運輸業,郵便業 | 36.8% | 31.5% |
| 情報通信業 | 36.1% | 27.2% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 36.0% | 33.9% |
| 金融業,保険業 | 29.7% | 25.0% |
| 製造業 | 28.6% | 21.2% |
| 複合サービス事業 | 27.3% | 28.8% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 22.9% | 19.1% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 14.7% | 12.4% |
いちばん下の電気・ガス・熱供給・水道業は高校卒14.7%。宿泊業・飲食サービス業との差は50.0ポイントで、大学卒でも12.4%と55.4%の43.0ポイントある。上位5産業のなかで見ていた学歴の差より、産業を端から端まで並べたときの幅のほうが、桁がひとつ違う。
高校卒のほうが高いという関係は、17のうち16で成り立つ。例外は複合サービス事業だけで、高校卒27.3%に対して大学卒28.8%。差がいちばん狭いのは学術研究・専門・技術サービス業の2.1ポイントで、ここは大学卒の33.9%が全体の33.8%とほとんど重なる。
「その他」はこの表から外してある。報道発表資料の上位5産業も「その他」を除いた並びで、高校卒49.2%・大学卒47.8%と、載せれば上から5番目に入る大きさ。何が入っている区分なのかは、資料から読み取れない。
区分の切り方も揃っていない。17のうち15は産業大分類そのままだが、卸売業と小売業だけは大分類「卸売業,小売業」を2つに割った形なので、大分類の値と、この48.3%・40.4%を同じ表に並べることはできない。同じ産業の区分で辞めなかった人の側を1年ぶんで見たのが業種別の定着率で、数え方も期間も違うから引き算はできない。
分母は、2022年の春に雇用保険へ入った人
離職率の作り方そのものは、資料に書いてある。事業所からハローワークに出された雇用保険の加入届を使い、生年月日と加入した時期から新規学卒者と推定される人を数え、そこから離職日を追う。
大学卒でいうと、2022年3月1日から6月30日までに新規学卒として雇用保険に入った人が分母。そのうち2025年3月31日までに離職した人が分子で、この2つを割ったものが55.4%や33.8%になっている。把握したのは卒業から3年後の2025年6月時点。全体の37.9%・33.8%そのものを扱ったのは3年以内離職率は大卒33.8%のほう。
学歴のほうも、卒業した学校の記録を見て分けているわけではない。生年月日からの推定である。大学卒とみなすのは2000年4月1日以前に生まれた人で、高校卒は2002年4月2日から2004年4月1日までに生まれた人。浪人や留年で年齢がずれた人は、別の学歴のほうに数えられていることがある。
6月30日という締め切りも効く。3月に学校を出て、7月以降に働きはじめた人は、新規学卒就職者として数えられていない。
この離職率で言えないこと
3年以内に辞めたかどうか、までしか分からない。辞めた人が次にどこへ行ったのか、同じ産業のなかで移ったのか、産業ごと変えたのか、いったん働くのをやめたのかは、雇用保険の記録を離職率という1つの割合に集計した時点で落ちている。追えるのは、最初の勤め先を離れたという事実だけ。
産業の区分は、就職したときの事業所の産業である。3年のあいだに転職した先の産業ではない。
雇用保険の被保険者になっていない働き方は、最初から入っていない。
そして事業所の規模でも、この数字は大きく動く。同じ2022年3月卒の大学卒で、従業員1,000人以上の事業所は27.0%、5人未満は57.5%だった。差は30.5ポイントで、産業でついた幅と同じくらいある。離職率の高い産業と小さい事業所は重なりやすいので、64.7%という値のうちどこまでが産業の効果なのかは、この表からは分けられない。規模別の内訳は規模別の定着率は42%から73%に置いてある。
55.4%の内側にある、自分の3年
64.7%も55.4%も、同じ年に卒業した人を全国でまとめた割合である。3年後に自分がどちらに入るかを、この表が決めるわけではない。
手元で数えられるものなら、いくつかある。入社してから今日までに、同期が何人辞めたか。辞めた人が何年目で辞めたか。自分の担当が変わった回数と、そのうち希望を聞かれた回数。
どれも産業の平均には出てこない値で、書き留めておくと、3年目に進路を考えるときに、率ではなく自分の周りで起きたこととして材料になる。





