インセンティブは、成果を出したら払うと先に決めておく報酬を指す。語そのものの意味は誘因。職場では金銭の形をとることが多く、厚生労働省が毎年の就労条件総合調査で数えている諸手当のうち「業績手当など」が、おおよそこれに当たる区分として集計されている。令和6(2024)年11月分として支給された額は、労働者1人平均で64.1千円。諸手当13種類の中でいちばん高い。
インセンティブとは、成果に連動する報酬
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統計の中では「業績手当」として数えられる
就労条件総合調査は、業績手当を「労働者個人、部門・グループを単位として達成した労働の量的成果及び会社全体として達成した業績に対して支給する賃金」と定義している。単位が3つ並んでいるところが肝心で、個人の成績だけを指す語ではない。部門の達成と会社全体の業績も、同じ枠に入る。
含まないものもはっきりしている。基本給、通勤手当、家族手当のように成果と関係なく払われるもの。それに、1か月を超える期間ごとに払う賞与。毎月の賃金に乗るか年2回まとめて出るかという支払の間隔の違いだけで、同じ「成果に応じて払う金」が統計の上では別の区分に振り分けられてしまう。
賞与との線引きは、支払う間隔にある
賞与は1か月を超える期間ごとに支払われる賃金で、割増賃金の算定基礎から除くことが認められている(労働基準法第37条第5項)。毎月の給与に業績手当として乗る場合は、算定基礎に入る。つまり、成果に連動する金を毎月払う会社と年2回払う会社では、残業1時間あたりの単価が変わる。
賞与そのものの性質は賞与とはに、割増賃金の計算の順番は残業代の計算に書いた。どちらも名前ではなく、支払の間隔と算定方法で決まる。
どう測るか。読む欄は3つ
公開されている測り方は、賃金の構成を分解することだ。
- 就業規則か賃金規程に、支給条件が書かれているか。モデル就業規則の解説は、賞与を支給する場合に支給対象時期・算定基準・査定期間・支払方法を明確にしておく必要があるとしている
- 算定式が示されているか。「会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する」という定め方だと、式は開示されていない
- 給与明細のどの欄に乗るか。毎月の手当か、賞与か
数として出せるのは、賃金に占める変動部分の割合。令和6年11月分の常用労働者1人平均所定内賃金は341.8千円で、そのうち諸手当が54.5千円、所定内賃金に占める諸手当の割合は15.9%だった。基本給が84.1%。毎月の賃金で動きうる部分は、もともと狭い。
支給した企業は13.7%
諸手当を支給した企業のうち、業績手当などを支給した企業の割合は13.7%。通勤手当などの90.2%、役付手当などの84.2%と並べると、ずいぶん少ない。調査客体6,448社のうち3,820社が答えた集計(有効回答率59.2%)で、常用労働者30人以上の民営企業が対象。
令和2年調査(令和元年11月分)の支給企業割合は13.9%。5年でほとんど動いていない。一方で1人平均の支給額は52.2千円から64.1千円へ、11.9千円増えた。払う会社の数は変わらず、払う額が増えた5年。
規模が小さいほうが、1人あたりは高い
支給額を企業規模で割ると、向きが逆になる。
| 企業規模 | 業績手当などの1人平均支給額 | 支給企業割合 |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 54.9千円 | 13.0% |
| 300〜999人 | 65.8千円 | 12.7% |
| 100〜299人 | 64.1千円 | 14.8% |
| 30〜99人 | 77.2千円 | 13.5% |
30〜99人の77.2千円と、1,000人以上の54.9千円で22.3千円の差。支給企業割合のほうは13.0%から14.8%の幅に収まっていて、規模による傾きがない。推定: この平均は支給を受けた労働者で割った額なので、小さい会社で対象者が営業職など一部に絞られていれば、1人あたりの額はそのぶん高く出る。母数の違い。
金銭以外の誘因は、表彰の条項に出る
インセンティブという語は金銭の外も指す。表彰、昇格、担当の変更。このうち表彰は、就業規則に残る形で確かめられる。表彰と制裁の種類及び程度に関する事項は就業規則の相対的必要記載事項に当たるので、その会社が表彰の定めを置いているなら、種類と程度が就業規則のどこかに書かれているはずだ。
モデル就業規則第66条が挙げるのは、業務上有益な発明や考案で業績に貢献したとき、永年にわたって誠実に勤務し成績が優秀で他の模範となるとき、社会的功績があったときなど。賞状のほか賞金を授与すると書かれている。何が称えられる職場なのかは、ここを読めば分かる。
自分の職場で確かめる
賃金規程の支給条件、給与明細の欄、1年ぶんの支給額の振れ幅。この3つを書き出すと、自分の賃金のうち何%が成果に連動しているかが出る。割合が小さければ、評価の結果は賃金よりも別のところに現れている。
評価そのものの手続きは年次評価とはで、配分をどう受け取るかは公正の知覚とはで扱った。基本給の側が動く仕組みはベースアップとはにある。





